「施主もつくり手も、この建築にかかわった皆に喜んでもらえることが嬉しい」--マウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏氏・麻魚氏は、真鶴の海を望む別荘「Shore House(海辺の家)」でJIA新人賞を受賞した。抽象的なアイデアだけでなく、それを具体化するためのプロセスを重視して設計を進めるという両氏に、受賞の喜びと今後の設計活動に向けた意気込みを聞いた。
真宏氏と麻魚氏が初めて日本建築家協会(JIA)の新人賞に応募したのは、2006年のことだった。その際も審査を順調に通過したが、審査員からは「新人らしくない」と評され、受賞には至らなかった。「新人らしさとは何かを考えさせられた」と麻魚氏は語る。それだけに受賞の喜びもひとしおだ。「受賞によって、われわれの建築設計のやり方もあり得るのだと、価値観を認められたように感じた」と真宏氏。
両氏が設計に際して重視し、「新人らしくない」と評価される一因となったのが「健全なものづくり」へのこだわりだ。「抽象的な“遊技”だけで責任ある建築設計はできない。建築家はまず最初に建築を完成させるための具体的な道筋を考えるべき」(真宏氏)とし、「ものづくり」を根幹に据えた質の高い設計の必要性を強調する。
「良い建築は構造・工法・材料・デザインを考えた結果として生まれる」(麻魚氏)、「空間的なセンスと建築をつくる楽しさが両輪となって質の高い建築はできる」(真宏氏)とし、受賞作の設計においても無理のない生産プロセスの実現に注力した。「普遍化を求めるのではなく、関係者それぞれの思いに応えることが新しい建築につながる」(同)と語る。
設計に際しての施主からの要望は、「家族やその友人が集まってくる場所が欲しい」という内容だった。それに応えるため、周囲の樹木・地形・海への視線・材の特徴を踏まえた高さや軸を設定した。目指したのは、「都市型の尺度を導入するのではなく、周囲と調和して来る人を優しく受け入れる」建築だ。
内部においても、LVL・天然木・鉄など多様な材を活用しながら、それぞれの持つ量感や密度に調和した構成となるように配慮した。特に桁・柱で使用した天然木は、施主とともに貯木場におもむき、最もふさわしい材を選定した。具体的な「もの」を基盤とすることで、抽象的なアイデアからは生まれない周囲の環境との「和」を実現した。「設計を論理的に考える構築性と素材との出会いが持つ即興性のセッションが良い建築を生み出した」(真宏氏)と振り返る。
審査では、革新的なアイデアよりも質実な設計そのものが高い評価を受けた。麻魚氏は「自分たちの信じる道を歩んできたつもりだったが、今回の受賞は大きな励みになった」とし、「建築の考え方は作品として表すだけでなく、発表し、審査を受けることで同じ世界に生きる人とつながっていくのだと思う」と語る。真宏氏も「建築は世の中の質を高めるためにあると信じて設計をしてきたが、その道が間違っていなかったと実感した。これからも良い建築を通じて、世界をより美しく、良いものにしたい」と今後の意気込みを語った。
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真宏氏と麻魚氏が初めて日本建築家協会(JIA)の新人賞に応募したのは、2006年のことだった。その際も審査を順調に通過したが、審査員からは「新人らしくない」と評され、受賞には至らなかった。「新人らしさとは何かを考えさせられた」と麻魚氏は語る。それだけに受賞の喜びもひとしおだ。「受賞によって、われわれの建築設計のやり方もあり得るのだと、価値観を認められたように感じた」と真宏氏。
両氏が設計に際して重視し、「新人らしくない」と評価される一因となったのが「健全なものづくり」へのこだわりだ。「抽象的な“遊技”だけで責任ある建築設計はできない。建築家はまず最初に建築を完成させるための具体的な道筋を考えるべき」(真宏氏)とし、「ものづくり」を根幹に据えた質の高い設計の必要性を強調する。
「良い建築は構造・工法・材料・デザインを考えた結果として生まれる」(麻魚氏)、「空間的なセンスと建築をつくる楽しさが両輪となって質の高い建築はできる」(真宏氏)とし、受賞作の設計においても無理のない生産プロセスの実現に注力した。「普遍化を求めるのではなく、関係者それぞれの思いに応えることが新しい建築につながる」(同)と語る。
周囲の環境との「和」を実現 |
多様な素材を組み合わせた |
外部の樹木なども考慮して設計 |
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