2015/02/26

【JIA新人賞】原田真宏、麻魚氏の「海辺の家」 こだわった「健全なものづくり」

「施主もつくり手も、この建築にかかわった皆に喜んでもらえることが嬉しい」--マウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏氏・麻魚氏は、真鶴の海を望む別荘「Shore House(海辺の家)」でJIA新人賞を受賞した。抽象的なアイデアだけでなく、それを具体化するためのプロセスを重視して設計を進めるという両氏に、受賞の喜びと今後の設計活動に向けた意気込みを聞いた。

 真宏氏と麻魚氏が初めて日本建築家協会(JIA)の新人賞に応募したのは、2006年のことだった。その際も審査を順調に通過したが、審査員からは「新人らしくない」と評され、受賞には至らなかった。「新人らしさとは何かを考えさせられた」と麻魚氏は語る。それだけに受賞の喜びもひとしおだ。「受賞によって、われわれの建築設計のやり方もあり得るのだと、価値観を認められたように感じた」と真宏氏。
 両氏が設計に際して重視し、「新人らしくない」と評価される一因となったのが「健全なものづくり」へのこだわりだ。「抽象的な“遊技”だけで責任ある建築設計はできない。建築家はまず最初に建築を完成させるための具体的な道筋を考えるべき」(真宏氏)とし、「ものづくり」を根幹に据えた質の高い設計の必要性を強調する。
 「良い建築は構造・工法・材料・デザインを考えた結果として生まれる」(麻魚氏)、「空間的なセンスと建築をつくる楽しさが両輪となって質の高い建築はできる」(真宏氏)とし、受賞作の設計においても無理のない生産プロセスの実現に注力した。「普遍化を求めるのではなく、関係者それぞれの思いに応えることが新しい建築につながる」(同)と語る。

周囲の環境との「和」を実現
設計に際しての施主からの要望は、「家族やその友人が集まってくる場所が欲しい」という内容だった。それに応えるため、周囲の樹木・地形・海への視線・材の特徴を踏まえた高さや軸を設定した。目指したのは、「都市型の尺度を導入するのではなく、周囲と調和して来る人を優しく受け入れる」建築だ。

多様な素材を組み合わせた
内部においても、LVL・天然木・鉄など多様な材を活用しながら、それぞれの持つ量感や密度に調和した構成となるように配慮した。特に桁・柱で使用した天然木は、施主とともに貯木場におもむき、最もふさわしい材を選定した。具体的な「もの」を基盤とすることで、抽象的なアイデアからは生まれない周囲の環境との「和」を実現した。「設計を論理的に考える構築性と素材との出会いが持つ即興性のセッションが良い建築を生み出した」(真宏氏)と振り返る。

外部の樹木なども考慮して設計
審査では、革新的なアイデアよりも質実な設計そのものが高い評価を受けた。麻魚氏は「自分たちの信じる道を歩んできたつもりだったが、今回の受賞は大きな励みになった」とし、「建築の考え方は作品として表すだけでなく、発表し、審査を受けることで同じ世界に生きる人とつながっていくのだと思う」と語る。真宏氏も「建築は世の中の質を高めるためにあると信じて設計をしてきたが、その道が間違っていなかったと実感した。これからも良い建築を通じて、世界をより美しく、良いものにしたい」と今後の意気込みを語った。
建設通信新聞の見本紙をご希望の方はこちら

Related Posts:

  • 【建築】坂出の「空中都市」を耐震改修で再生! 青木繁が基本計画 完成当時の人工土地(坂出市HPから) 香川県坂出市は、貴重な近代建築物として、建築界などで注目を集めている「坂出人工土地」(清浜亀島住宅地区)の再生に取り組む。再生基本計画策定業務は青木繁研究室が担当。2013年度内に計画をまとめ、14年度以降の設計業務につなげる。 基本計画では、耐震改修を柱に中心市街地活性化に寄与する再整備を検討する。事業手法やスケジュール、事業費、施設内容などの具体的な内容も盛り込む。 庁内の若手職員によるプロジェクト… Read More
  • 【JIA新人賞】原田真宏、麻魚氏の「海辺の家」 こだわった「健全なものづくり」 「施主もつくり手も、この建築にかかわった皆に喜んでもらえることが嬉しい」--マウントフジアーキテクツスタジオの原田真宏氏・麻魚氏は、真鶴の海を望む別荘「Shore House(海辺の家)」でJIA新人賞を受賞した。抽象的なアイデアだけでなく、それを具体化するためのプロセスを重視して設計を進めるという両氏に、受賞の喜びと今後の設計活動に向けた意気込みを聞いた。  真宏氏と麻魚氏が初めて日本建築家協会(JIA)の新人賞に応募したのは、2006年… Read More
  • 【インタビュー】モダンさと持続可能性をつなぐ 「Houzz」ベストデザイン受賞のピエレオーニ氏に聞く  世界11カ国で展開している住宅デザイン・設計のためのプラットフォーム「Houzz(ハウズ)」。自分の家をつくりたい人と建築設計のプロフェッショナルが交流できるサイトとして米国や欧州などで広く知られている。日本でも700人を超える建築家が登録し、豊富な事例に触れることができる。このHouzzが開催した「Houzz award Best of Design 2016」が先日公表された。受賞したのは、イタリアの設計事務所「COOLSTOODI… Read More
  • 大阪士会の渡辺節賞を受賞 SPACESPACEの『Dアパートメント』 Dアパートメント(CASA小次郎)の外観(撮影:鳥村鋼一)  『Dアパートメント(CASA小治郎)』で大阪府建築士会の渡辺節賞を受賞したSPACESPACEの香川貴範氏と岸上純子氏。香川氏は「関西では珍しく“居心地の良さ"などといったあいまいなポイントでなく、論を立てて建築を作ることを評価していただいた。大変うれしく思う」と話す。  Dアパートメント(S造3階建て延べ228㎡)は、駅前の密集地に建つ単身用賃貸集合住宅。約2m幅の細長い住戸を… Read More
  • 【海外建築家のBIM目線】「常に新たなテクノロジーのスキルを磨き続ける」 SHoPアーキテクツのジョン・セローン氏(米国)  BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを、設計から施工段階に一気通貫で活用することは、日本の建築プロジェクトでも目指す到達点の1つだ。設計業務のすべてにBIMを導入する米国の建築設計事務所「SHoPアーキテクツ」では施工者を含めたプロジェクト関係者間の密なデータ共有を実現している。ディレクターのジョン・セローン氏=写真=に、データ共有のポイントを聞いた。  全米プロバスケットボール協会(NBA)のチーム「ブルックリ… Read More

0 コメント :

コメントを投稿