2014/10/26

【現場の逸品】床材をしっかり接着、でも剥がしやすいシリコーン系接着剤 セメダイン

「伸縮と拘束の相反する性能を同時に確保できた」。セメダイン営業統括本部の堀大祐氏は、11月から販売する木質床材用接着剤『フロアロック110』への手応えを口にする。床仕上げ工事では拘束性にすぐれた接着力を誇るウレタン樹脂系接着剤が主流になっているが、作業時に誤って床表面に付着させると、剥(は)がすのに一苦労する難点がある。同社は変成シリコーン樹脂系の素材を使い、強い接着性を保持しながらも剥がしやすい接着剤の開発に成功した。

 市場の8割を占めるウレタン系は強い接着力を生かし、床仕上げのフローリング材にとどまらず、捨て梁や床つかの作業にも広く使われている。近年の分譲マンションや戸建て住宅では、工事完了後の引き渡し点検がより厳しくなり、小さな接着剤の付着もクレーム対象になってしまう。あらゆる部位の接着に使えるウレタン系だが、床表面に付着してしまった場合には除去が難しく、床の張り替えを余儀なくされるケースも少なくないという。

シリコーン系(右)は簡単に剥がせるが、ウレタン系(左)は一苦労する
同社は、30年にわたって蓄積してきた変成シリコーン樹脂系接着剤の技術を応用し、きれいに剥がせる接着剤の研究を進めてきた。5年前に剥がしやすさを追求した商品を上市したものの、拘束性能の部分に若干の課題を残していた。それを克服した新商品は、ウレタン系と同等の拘束性を実現した。
 床材の接着では床暖房との関係性に難しさがある。暖房時にはフローリング材の下から50度-60度の温水などを使って暖めるため、木材に縮みが発生し、それを押さえ込むには接着剤に高い拘束力が求められる。そもそもシリコーン系は柔らかく固まるがゆえに、床暖房による木材の伸長収縮には対応しにくく、「目隙」や「突き上げ」などを引き起こす可能性を指摘されていた。
 その原因を究明しようと、同社は目隙や突き上げのメカニズムを徹底して分析してきた。開発部の西村香菜さんは「力が加わり続けると接着剤の構造が変化し、その力を吸収した接着剤はいつまでも伸び続ける特性が、原因の根幹にあることが分かった。この特性を抑えることで、拘束性を高められると考えた」と明かす。

実際のフローリング床を再現し、連続1,100時間の床暖房試験で性能を確かめた
床材メーカーのお墨付きを得るため、茨城工場(茨城県古河市)には幅4m、長さ8mの専用試験装置を4台導入し、メーカーごとに異なる床材の基準に照らした接着試験を繰り返してきた。大工職人に施工してもらい、実際のフローリング床を再現し、連続1100時間の床暖房試験で性能を確かめた。
 初年度の販売目標は2億円。これは従来品の売り上げの約2倍に達する。堀氏は「消費増税の影響で住宅着工の不透明感が漂うものの、職人不足を背景に手戻りの少ない製品のニーズは今後さらに高まる」と、商品への自信をのぞかせる。性能試験を完了した床材メーカーは既に十数社に達し、一定の販路を構築できた手応えもある。
 5年後には10億円規模に販売量を増やす計画で、現在1-2割にとどまっているシリコーン系接着剤の販売シェアを3-4割まで引き上げたいと試算している。シリコーン系接着剤を販売する同業メーカーでは新商品投入の動きがないだけに、市場開拓を優位に進められるとの目算もある。
 さらなる機能強化にも目を向け始めている。リフォーム工事の拡大に呼応し、床の張り替え需要も一気に高まりを見せる。堀氏は「床自体は簡単に剥がせるが、その際に床暖房パネルも一緒に剥がしてしまう可能性がある。将来的にはパネルも傷付けない接着剤に成長させたい」と考えている。
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