全国地質調査業協会連合会(成田賢会長)は、『ジオリスクマネジメント』を発行した。英国土木学会が発行した『Managing Geotechnical Risk-Improving Productivity in UK Building and Construction-(ジオテクニカルリスクのマネジメント-英国の建築・土木における生産性の改善』(2001年発行)を邦訳したもので、最近でも講習会などで多数紹介されており、地質リスクマネジメントについての最も重要な実務解説書として知られている。
日本国内でも、建設現場のトラブルの多くは地盤が関係している。予想外の軟弱地盤が出現し施工した盛土が大きく沈下したり、杭の支持層の深さを詳細に把握できていなかったために杭長が不足してしまったり、道路法面の切土施工を始めると斜面崩壊が生じるなど地盤に関連した多くの施工トラブルがある。
工事では極めて多くのリスクが潜んでいるが、それらの地質リスクをできるだけ早い段階で把握しておき、調査、設計、施工に進む段階で各リスクを分析評価し、どれだけのリスクが残されているかを知れば、的確な対策工の設計ができ、施工に際して残されたリスクに焦点を当てた計測モニタリングを行うことが可能になる。
同書は、このような観点で建設事業全般にわたり、地盤関連のリスクを中心にリスクマネジメントを実践する基本的な考え方を解説している。地盤や地質の専門家だけでなく、発注者、設計者、施工者の役割が示されていることが特徴だ。付録に詳述されているリスク管理表がリスクマネジメントを行う上で、極めて重要な役目を果たすことになる。本書の考え方は、官民両者の土木・建築の幅広い分野に適用可能で、特に実務に携わる者に役立つ。
(英国土木学会編 全国地質調査業協会連合会訳、古今書院、3000円+税)
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