大林組が施工する相模原市の「さがみ縦貫相模川橋上部工事」で、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)が現場運営に効果を発揮している。橋の中央径間は長さ150mに達し、左右のバランスを取りながらPC(プレストレストコンクリート)を張り出す難しさに加え、錯そうする桁端部の配筋にも緻密な施工が求められる。大賀猛所長は「事前の作業確認に3次元モデルが有効に作用している」と、CIM導入の効果を口にする。
◇本社からの要請
張出し架設工法の起点となる柱頭部工の作業が終盤に差し掛かり、本社からCIM試行の呼び掛けがあったのは1年ほど前。「一体何ができるのだろうか」。最初は半信半疑だった大賀所長だが、厳しさが見え始めていた工期への対策になればと前向きにとらえた。まず取りかかったのは、現場の課題整理だった。
やじろべえのように左右にバランスを取りながらPCを張出す一連の作業では、桁がたわみと上げ越しを交互に繰り返す。その計測に加え、桁内に配置する外ケーブルや付属金物の干渉も事前に厳密なチェックが必要だった。桁端部に生じる過密配筋の施工手順も手戻りが許されない。「施工判断を迅速に進められる部分に絞り、3次元の活用を決めた」と明かす。
同社の中でCIMに取り組むのは海外工事1件を含め計16現場。その推進役を務める土木本部本部長室情報企画課の杉浦伸哉課長は「導入現場の噂を聞き、自発的に手を挙げる現場も多く、今年度には20件を超えるだろう」と強調する。特に先行事例となる同現場への思い入れは強い。
◇現場の負担にしない
常に心掛けているのは、CIM導入が現場の負担にならないように配慮している点だ。「3次元モデルがなくても現場は動く。現場が何を欲しているかを探り、その問題解決を支援するツールを提供することに力を注いでいる。CIMは現場の付加価値であるべきだ」。現場が使っている2次元図面のデータを3次元に置き換えることによって、これまでにない効果的な使い方が可能になる。
張出し架設工法では、一般的にたわみや上げ越しの施工管理に表計算ソフト(エクセル)を活用するケースが多い。あえて測量結果を3次元に可視化し、誤差に応じて色分けして表現した。桁端部に限定した施工手順検討では、配筋図、PCケーブル図など関連図面を3次元に統合することで、事前に干渉部分を厳密に示した。
現場技術者はタブレット端末を使い、可視化された3次元モデルで作業員に具体の指示を出す。「彼らの驚きは、実に印象的だった。難航すると思われた過密鉄筋の部分も手戻りなく順調に進んだ。われわれの負担がなく、施工判断を迅速にできることは、現場にとって大きなプラス」と、大賀所長は考えている。
◇CIMはツール
CIMを実際に使うことで、現場からのアイデアも出てきた。完成後には維持管理を想定し、生コンの属性情報を発注者側に提供する予定だ。施工情報がトレーサビリティのツールになるとの思いからだ。杉浦氏は「CIMの機運が高まる中で、問われるのは3次元モデルをつくることでなく、現場がどう使うか。だからこそ現場ごとに要求は異なり、CIMの切り口も違っている」と説明する。
工事の進捗率は9割を超え、現在は壁高欄の設置作業中。順調に2014年2月末の竣工を迎えようとしている。大賀所長はCIMとのかかわり方について、所員にこう言い聞かせている。「3次元の効果は絶大だが、これが答えではない。CIMはツールであり、発注図面に基づいた成果物を提供することがわれわれの使命だ」
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