2013/12/12

【内藤廣】新国立競技場再考要望に反論! 「審査は公平だった」

事務所のHPに掲載されている文書
新国立競技場をめぐって再考を求める動きがあることに対し、国際デザイン・コンクール(コンペ)の審査委員を務めた内藤廣氏が一人の建築家として「現在の状況に対するわたくし個人の見解と危惧」を事務所のホームページ(HP)で公表した。コンペ実施の手続きや情報発信のあり方は「反省点」としつつも審査は公平に行われたと強調。また、神宮外苑地区の歴史性や景観、コスト、規模などに関する指摘には、複数の視点・切り口から反論し、「これを機会に、東京を次の半世紀に向けて強くする。新しい国立競技場は奇異な形に見えるかもしれないが、これを呑みこんでこそ、次のステップが見えてくるのではないか」と提起している。

 「建築家諸氏へ」と題した論文では、さまざまな場面で新国立競技場に関する質問が投げかけられる状況を「社会的な正義を唱える建築家たちの姿は、しばらく見かけなかったことです。これは是とすべきでしょう」と受け止める。
 また、槇文彦氏の意見表明には「全く違和感はありません」とする一方で、署名運動が組織的に広げられたことには「違和感は増すばかり」だとした。さらに、団体名で提出された署名に対しては「その団体はこのプロジェクトに対して本気で水を差す覚悟があるのでしょうか。建築家の良識とは、その範囲のものだったのでしょうか」と疑問を投げ掛けている。
 合わせて、「建築とは何か、建築表現とは何か、建築には何が可能なのか、というより根源的な議論が巻き起こってしかるべきなのに、語られているのは『分かりやすい正義』ばかり」と言い切る。
 さらに、東日本大震災の復旧・復興や福島原発問題を引き合いに、「分かりにくく本質的な問題に黙する、というのはおかしい。もし、市民の立場に立つというのなら、良識を標榜するのなら、署名を集めるのなら、本当に怒る相手を間違えているのではないか」と訴えた。
 一方、こうした状況がザハ・ハディド氏の「やる気」を削ぐことへの危ぐを示した上で、「決まった以上は、最高の仕事をさせる、ザハ生涯の傑作をなんとしても造らせる、というのが座敷に客を呼んだ主人の礼儀であり、国税を使う建物としても最善の策だと思う」との考えを示している。
 また、神宮外苑の歴史性を問うなら「その発祥は新しい文化を取り入れ育む場所だったことも思い出すべき」と指摘する。
 東京が国際的な都市間競争を勝ち抜いていくためにも、「どうせやるのなら、この建物に合わせて東京を都市改造する、くらいの臨み方がよいと思っている」「8万人規模の集客が数多く生まれるような都市になるためにはどしたらよいのか、そのような東京を造っていくのにはどうしたらよいのか、と考える方が前向きの考え方ではないか」と問いかけている。
 内藤廣建築設計事務所のHPは、
http://www.naitoaa.co.jp/
 
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