2013/12/04

【BIM】英国政府は2016年までにBIM管理導入

ベントレーがロンドンで開いたBeInspiredイベント
「イギリスの取り組みが先行事例として参考になるはずだ」。米国CAD大手ベントレー・システムズでCOO(最高執行責任者)を務めるマルコム・ウォルター氏はBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)導入の機運が高まる日本の現状について、そう指摘する。
 英国政府は2016年までに、規模を問わずすべての公共建設物をBIMで管理する「BIMレベル2」に到達させる目標を掲げる。その背景にあるのは、建設プロジェクトの海外輸出に向けて動く官民の強い連携だ。

 英国には、国内経済の約7%に当たる900億ポンドの市場規模があり、建設産業の従事者は国内労働者人口の10%に当たる約28万人を占めている。日本と同様に近年は建設投資の低迷に悩まされており、新たな市場開拓が喫緊の課題だった。
 そういった状況の中で英国が選んだのが、半ば強引にでも国を挙げてBIMを動員するという方策だった。BIMレベル2という目標は、海外展開を広めるための土台づくりとも言える。プロジェクトの大規模・複雑化が進む中で、最先端の情報技術の活用は不可欠だ。特にBIMは企画、設計、施工、維持管理、運営といったプロジェクト全体の情報を統合するための重要なシステムであり、建設プロジェクトの海外展開の要にもなり得る。
 ベントレー・システムズが10月末にロンドンで開いたユーザーイベント「Be inspired(ビー・インスパイアード)」。英国はもちろん、世界中から同社システムのユーザーが集まり、プロジェクトを通じて生み出したイノベーションを競い合った。
 この中で記念講演に立った英国政府のチーフ・コンストラクション・アドバイザーを務めるピーター・ハンスフォード氏は、国際的にみれば建設産業はまだまだ成長産業であるとし、こう強調した。「建設産業の国外輸出は大きなチャンスになる。停滞する国内経済を盛り返す上でも、英国政府は民間企業が海外で活躍するためにできる限りの手を尽くす」
 ビー・インスパイアードには数多くの政府発注プロジェクトが出展し、BIMを含めた情報システムが成し遂げた革新的な取り組みが紹介された。世界の潮流は、情報技術の導入法を検討する段階から、活用法について検討する段階に入りつつある。日本では、国土交通省が海外展開の支援を拡充する方針を示しているが、BIMの活用は試行段階にとどまる。
 「重要なのは、産業と政府が長期的な視野でパートナーになることだ」とピーター氏。英国が官民連携の拡大に向けて大きくかじを切った理由の1つに、ロンドン五輪という国家プロジェクトを官民が協力して達成した成功体験があるという。今後、日本が東京五輪に向けた準備を重ねていく中で、新たな官民連携が生まれることに大きな期待が集まっている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
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