2013/12/23

【現場最前線】トルコの長大吊橋! 「イズミット湾横断橋」


ケーソンの施工
トルコ最大の都市イスタンブールの南東約60㎞に位置するイズミット湾口部で中央径間が世界第4位の1550mとなる「イズミット湾横断橋」の建設が進められている。吊橋部上下部工の設計施工一式をフルターンキーで請負ったのは、同国での橋梁工事実績と技術力を高く評価されたIHIインフラシステム(IIS)だ。断層地帯近くでの架橋や、40mという水深での海中基礎工事、37カ月の短納期といった厳しい条件をクリアするため、これまでに培ってきた技術とノウハウを惜しみなく投入している。世界有数の長大吊橋建設は、トルコ西部地域の経済発展をけん引する国家事業であると同時に、日本の吊橋架設技術を次世代につなぐという重要な役割も果たしている。



南側アンカレイジ
◇長さ2682mの吊橋

 イズミット湾横断橋は、イスタンブールとエーゲ海に面するトルコ第3の都市であるイズミルを結ぶ全長約420㎞の高速道路プロジェクトの一部。長さ2682mの吊橋で湾の南北をつなぎ、主塔の高さは水面から252mに達する。
 現在は、2本の主塔の基礎部分となるRC構造ケーソンの海上構築と、南北のアンカレッジへのコンクリート打設作業などが鋭意進められている。高さ14.4m、幅54m、長さ67mの巨大な2函のケーソンは、ウエットドックに係留され、コンクリート打設作業が本格化している。
 アンカレッジは南北とも重力式だが、北側は固い岩を崩削して3万6000m3のコンクリートを打設。埋立地に設置する南側は2次断層が近くにあるため、当初計画の設置位置から北側に約100m移動させ、連壁で囲ったベースに、北側の2倍以上の8万5000m3を打設する。
完成予想


◇2016年1月完成へ

 2014年3月には塔位置にケーソンを沈設し、同6月からは主塔の設置工事が始まる。15年2月にはケーブルの架設工事に着手し、16年1月の完成を予定している。主塔は1塔当たり22ブロックに分けて順次構築していく。桁ブロックは1日当たり4ブロックをリフトし、計113個をケーブルハンガーで吊り、段階的につなげる。
 横断橋計画は、1994年にスタートし、97年にIHIを含むコンソーシアムが落札したが、99年に架橋地点近くを震源としたマグニチュード7.4の大規模地震が発生したことから、計画が白紙になった経緯がある。
 橋を含む高速道路全体はBOT(建設・運営・譲渡)方式で08年に再度入札公告され、09年にトルコ、イタリアの計6社で構成するコンソーシアムが落札。橋を含む3㎞区間を同コンソーシアムと同じ構成員のEPCJV(NOMAYGJV)からIISと伊藤忠商事が受注した。
 中国や韓国勢に競り勝った背景には、トルコでの実績や免震技術、圧倒的な工期短縮提案があった。プロジェクトマネージャーを務めるIISの川上剛司取締役は「一般的には最低4年はかかるが、37カ月で完成させるため、さまざまな工夫を取り入れている」と説明する。例えば上部工では径5.91mmの素線127本をあらかじめ束ねたストランドを架設していくPPWS工法を採用し、「ケーブル架設の効率化により、工期短縮につなげている」という。
北側アンカレイジの施工


◇免震技術


 地震への対応では、ケーソンが海底地盤上を滑ることによる免震効果を確実に得るため、設置場所の海底を3m浚渫し、1カ所当たり直径2m、長さ約34mの埋め込み杭を195本打設して地盤を強化。砕石層を平らに敷きならし、海底に固定せずにケーソンを沈設して地盤と「縁切り」することで、地震力が上部に伝わらない設計を採用している。
 橋の完成により、フェリーで約1時間かかっている湾南北の横断はわずか6分に短縮され、地域の活性化に大きく寄与するが、架橋の効果はそれだけにとどまらない。「フルターンキーでこれだけの規模を手掛けることは日本ではまずできない。技術の継承のためにも大きな意義がある」。川上取締役は、世界有数規模の吊橋建設には、もう1つ重要な側面があると強調する。
 「吊橋をつくることと、大きな事業のプロジェクトマネジメントがしたかった」という2つの夢は今回の現場で実現した格好だが、「またやりたくなるんでしょうね」と次なるプロジェクトを見据え、満面の笑みを見せた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)


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