ケーソンの施工 |
南側アンカレイジ |
イズミット湾横断橋は、イスタンブールとエーゲ海に面するトルコ第3の都市であるイズミルを結ぶ全長約420㎞の高速道路プロジェクトの一部。長さ2682mの吊橋で湾の南北をつなぎ、主塔の高さは水面から252mに達する。
現在は、2本の主塔の基礎部分となるRC構造ケーソンの海上構築と、南北のアンカレッジへのコンクリート打設作業などが鋭意進められている。高さ14.4m、幅54m、長さ67mの巨大な2函のケーソンは、ウエットドックに係留され、コンクリート打設作業が本格化している。
アンカレッジは南北とも重力式だが、北側は固い岩を崩削して3万6000m3のコンクリートを打設。埋立地に設置する南側は2次断層が近くにあるため、当初計画の設置位置から北側に約100m移動させ、連壁で囲ったベースに、北側の2倍以上の8万5000m3を打設する。
完成予想 |
◇2016年1月完成へ
2014年3月には塔位置にケーソンを沈設し、同6月からは主塔の設置工事が始まる。15年2月にはケーブルの架設工事に着手し、16年1月の完成を予定している。主塔は1塔当たり22ブロックに分けて順次構築していく。桁ブロックは1日当たり4ブロックをリフトし、計113個をケーブルハンガーで吊り、段階的につなげる。
横断橋計画は、1994年にスタートし、97年にIHIを含むコンソーシアムが落札したが、99年に架橋地点近くを震源としたマグニチュード7.4の大規模地震が発生したことから、計画が白紙になった経緯がある。
橋を含む高速道路全体はBOT(建設・運営・譲渡)方式で08年に再度入札公告され、09年にトルコ、イタリアの計6社で構成するコンソーシアムが落札。橋を含む3㎞区間を同コンソーシアムと同じ構成員のEPCJV(NOMAYGJV)からIISと伊藤忠商事が受注した。
中国や韓国勢に競り勝った背景には、トルコでの実績や免震技術、圧倒的な工期短縮提案があった。プロジェクトマネージャーを務めるIISの川上剛司取締役は「一般的には最低4年はかかるが、37カ月で完成させるため、さまざまな工夫を取り入れている」と説明する。例えば上部工では径5.91mmの素線127本をあらかじめ束ねたストランドを架設していくPPWS工法を採用し、「ケーブル架設の効率化により、工期短縮につなげている」という。
北側アンカレイジの施工 |
◇免震技術
地震への対応では、ケーソンが海底地盤上を滑ることによる免震効果を確実に得るため、設置場所の海底を3m浚渫し、1カ所当たり直径2m、長さ約34mの埋め込み杭を195本打設して地盤を強化。砕石層を平らに敷きならし、海底に固定せずにケーソンを沈設して地盤と「縁切り」することで、地震力が上部に伝わらない設計を採用している。
橋の完成により、フェリーで約1時間かかっている湾南北の横断はわずか6分に短縮され、地域の活性化に大きく寄与するが、架橋の効果はそれだけにとどまらない。「フルターンキーでこれだけの規模を手掛けることは日本ではまずできない。技術の継承のためにも大きな意義がある」。川上取締役は、世界有数規模の吊橋建設には、もう1つ重要な側面があると強調する。
「吊橋をつくることと、大きな事業のプロジェクトマネジメントがしたかった」という2つの夢は今回の現場で実現した格好だが、「またやりたくなるんでしょうね」と次なるプロジェクトを見据え、満面の笑みを見せた。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)
0 コメント :
コメントを投稿