2013/12/26

【CIM】「3次元の日本列島」を無償提供 金沢のソフト会社

公開地形データをアルゴリズムで統合
「内向きのCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を外向きに」と語るのは、建設コンサルティングとソフトウエアの開発・販売を手掛ける五大開発(金沢市)の佐藤裕司常務システム事業部部長。構想から5年の歳月をかけた日本列島の3次元地形マップ『GONDWANA(ゴンドワナ)』が完成し、一般公開に踏み切った。国土づくりに関連した情報を集約する“場"として「自由に使ってもらいたい」と呼び掛ける。


◇地形データを集約

 GONDWANAのウエブアドレスはhttp://gondwana-land.jp/ 12日から無償提供を始めたGONDWANAは、国土地理院や米国航空宇宙局(NASA)などで公開されている地形データを、同社独自のアルゴリズムで集約したものだ。データを重ね合わせることにより、独自の統合データとして生まれ変わらせた。ここに土木のあらゆる関連情報を位置付ければ、国土管理マップとして有効利用できる。
 土木の実施設計段階では精度の高い詳細な地形データが求められるが、傾向をつかむレベルの情報が用いられる地形解析や鳥瞰図などではGONDWANAの利用価値が大きい。佐藤常務は「発注者には維持管理のベースマップ、設計者や施工者には蓄積している関連情報のデータベースとして使える」と強調する。
 公開した情報は3次元地形、尾根谷図、段彩図、傾斜量図、斜面方位図などで構成。画面上の機能を使えば、鳥瞰図や任意断面図を作成できる。マップには地すべり地形分布図(提供・防災科学技術研究所)やシームレス地質図(産業技術総合研究所)を貼り付けることも可能だ。「色合いや輪郭の設定もでき、好きな位置に切り出して使える。これまで3次元を敬遠していた技術者の方にもぜひ試してもらいたい」
20万分の1日本シームレス地質図


◇施工計画立案ツールにも


 全国には30万カ所とも言われるボーリングデータが公開されていることから、ゼネコンでは各地域で自らが実施したボーリングの情報も合わせて集約できれば、施工計画などの立案ツールとしても活用できる。建設コンサルタントも設計業務に付随する関連情報が競争力につながるだけに、保有データをいかに集約するかが問われている。使い方は多種多様だ。
 橋や道路など土木構造物をマップ上にプロットする際には、図面や地質情報だけでなく、入札や事故などの関連情報を加えることも可能。同社には地方自治体から、維持管理ツールとして活用できないかと、具体の相談も舞い込んでいる。「われわれの役割はあくまでも“場"の提供に尽きる。属性情報の作成や入力などの業務を受託するつもりはない。具体のビジネスモデルはまだ固まっていないが、実際の使われ方を調査する中で、立ち位置を決めたい」

◇外向きの情報発信

 同社は、GONDWANAを、建設コンサルタントにとってのビジネス創出の場にも位置付けている。保有する貴重な土木の関連情報を活用できれば、新たなビジネスの糸口を発見できるからだ。描いているのは「楽天型の収益モデル」で、著作権のかかわる情報加工のあり方についても研究を進めている。
 国土交通省が企画から設計、施工、維持管理までを一元管理するCIMの試行に乗り出したことから、土木分野における3次元データの活用ニーズが一気に高まりを見せている。佐藤常務は「CIMは管理ツールであるだけに、内向きに閉ざされている。社会や住民の目線から外に向けた情報発信の場も必要で、その受け皿として、GONDWANAが役に立てるのではないか」と考えている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

Related Posts:

  • 3D図面データから現場で墨出し TSで墨出し位置をレーザー照射。新菱冷熱 TSがレーザー照射で、墨出し位置を教える  新菱冷熱工業は1年前から、現場での墨出し作業にスマートモバイルの活用を始めた。設備機器類が干渉しないように図面には厳密な設置場所が決められており、特に大規模工事では墨出しのポイントが多く、量に比例してミスも起こりやすい。中央研究所の酒本晋太郎主査は「作業員1人でも確実に墨出しが行えるツールとして、スマートモバイルの活用に行き着いた」と明かす。  開発した3次元計測・墨出しシステムは、図面データ… Read More
  • 「吊り戸棚がここに欲しい」住宅設計、施主の要望にすぐ対応。福井コンピュータの「TREND Net 計算倶楽部」  福井コンピュータの提供するアプリケーション『TREND Net 計算倶楽部』は、住宅設計向けの簡易なシミュレーションサービスだ。開発のきっかけは、同社の主力建築CAD「ARCHITREND(アーキトレンド)Z」のユーザーを対象としたセミナーだった。講師役の戸田知治氏(戸田設計代表)が自前の計算ツールを紹介した際に聴講者の反応を見て、建築事業推進室の塩尾知仁室長が「これは、ぜひ商品化したい」と思い立った。  戸田氏は施主の悩みにすぐ応えられ… Read More
  • 「BIMで設計と教育は変われるのか!」建築学会が大阪でシンポジウム  日本建築学会は17日、大阪市の大阪大学中之島センターでシンポジウム2012「BIMで設計、教育は変わるのか?-BIMとインターネットを活用した設計コンペからみえたこと-」を開いた=写真。ゼネコンや設計事務所、大学の教員・学生が集い、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用提案を紹介したほか、普及への課題などを話し合った=写真。  シンポジウムは例年東京で開いているが、BIMを活用して仮想設計コンペを実施する「Build … Read More
  • BIMデータ15分の1に/ラティス・テクノロジーのiXVL View ラティス・テクノロジー(東京都千代田区)が2011年10月にリリースしたスマートモバイル対応のビューワソフト『iXVL View』は、独自開発のファイル形式「XVL」に変換された3次元モデルを自由に閲覧できる。鳥谷浩志社長は「製造業で7割近くの普及率を誇るXVL形式の利点を、ぜひ建設業界にも知ってほしい」と期待を込める。 製造業では、大手企業を中心に2000年ごろから3次元設計を導入する動きが高まったものの、データ容量の増大に対応せざるを得… Read More
  • 10万円を切る3D設計プレゼンソフト。メガソフトが4万点のデータとともにクラウド進出 iPadに映し出されるプレゼンテーションはリアルさを追求した  販売価格10万円を切る実務者向け3次元プレゼンテーションソフトとして支持を得ているメガソフト(大阪市)の「デザイナーPRO」シリーズ。主力の3Dマイホームに加え、オフィスとインテリアの全3種類で構成されている。手軽に3次元のレイアウトができるため、工務店などでは営業担当のユーザーも多い。 ソフトにはメーカー約40社から提供を受け、1万点もの商品の3次元データが収録されている。イ… Read More

2 件のコメント :

  1. この記事の2番目の図は地すべり地形分布図ではなく20万分の1日本シームレス地質図です。読者はみなさん直ぐに気づいて間違える人はいないと思いますが。

    返信削除
  2. haruru様 ご指摘ありがとうございました。訂正いたしました。

    返信削除