2014/09/10

【インタビュー】「女性職人はあたりまえ。出産後も続けられる」 左官職人の福吉奈津子さん

原田左官工業所(東京都文京区)に入社して10年。見習い期間中に出産し、子育てしながら左官職人を続けている。本人は飄々としているが、女性職人として注目され、9日には安倍晋三首相、太田昭宏国土交通相と懇談した。

 同社には以前も女性職人がいたものの、結婚、出産を機に辞めていった。自らも「見習い期間中だったので、自分から続けたいとは言い出せなかった」。ところが、当時の社長から「続けてみないか。いろいろな制度も活用するから」と声を掛けられ、続けることを決めた。ただ、「朝は早いし、家から遠い現場だと夕方5時で仕事が終わってもすぐに家に着くわけではない。特に家族の協力がないとかなり難しい」と感じている。現場から直接、帰宅することを認めてくれる「周囲の職人さんの好意」や会社の理解が欠かせない。

安倍首相を表敬訪問した福吉さん(左から3人目)。右から二人目は大林組の阿部さん
仕事は「夏場の建築現場とか、やっぱりつらい」と正直に語るが、同社では女性職人が日常の光景で、特別扱いはほとんどない。もちろん体力差でできる仕事の差はあるものの、重い砂運びも「やらなくて良いとは言われない」という。「女性も(やさしい仕事を与えられるようなことは)良いとは思わないんじゃないですか。そうされても上達しないから」。技能に対しては男女の別といった意識は見られない。
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