2014/09/10

【CIM】3次元的に可視化、タブレットで日常点検 東北地整が胆沢ダム管理に導入 

東北地方整備局は、胆沢ダムの維持管理にCIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)を導入している。調査・計画段階から完成までに蓄積された膨大な資料を整理・統合し、3次元的に可視化することで効率的かつ高度な維持管理を行うのが狙い。タブレット端末に必要データを取り込めば、日常点検などに活用できる。完成したダムの維持管理へのCIM導入は全国初という。

 胆沢ダムは、岩手県奥州市の北上川水系胆沢川上流に築造された、わが国最大級の中央コア型ロックフィルダム。1983年に事業着手し、31年の歳月を経て13年11月に完成した。
 この間、地形・地質データや設計図、完成図書などの膨大な情報が蓄積されたが、その大半は紙媒体で保管されている。
 同整備局では、胆沢ダムの安全性の確保を前提としたライフサイクル・コストの縮減を達成するため、CIMの構築による最適な維持管理に取り組むこととした。

主要土木構造物の位置をCIMで瞬時に把握
CIMの構築に当たっては、ダム本体の構造物だけでなく、胆沢扇状地や北上川の狭窄(きょうさく)部である一関市までの地形データや土質・地質試験結果、関連する発電所、近隣道路、橋梁などの図面データを取り込んだ。
 これらデータを3次元的に可視化した「胆沢ダムCIM」では、パソコン上でビューポイントとして主要な構造物の位置を瞬時に確認できるほか、関連するドキュメントやシステムにリンクする機能を持たせている。
 必要データをタブレット端末に取り込むことで、現場に持ち出すことも可能。600基を超える計測機器の設置場所も現場を歩きながら確認できる。

タブレット端末で日常点検

タブレット端末でのビューポイント操作
同ダムを管理する北上川ダム統合管理事務所では、タブレット端末を使った日常点検を実施している。例えば監査廊の漏水がどこのクラックから発生し、どのような対策を講じたかといった、クラック補修履歴を端末に入力。画像データも添付しているため、担当者が代わっても状況が容易に確認できる。
 同事務所の西條一彦所長は「建設当時のデータはダムを管理する上で非常に重要であり、瞬時に資料を閲覧できるメリットは大きい。日常点検で活用することにより、変位も見つけやすい」とした上で「CIMをさらに活用し、ダム本来の機能を長期的に提供できるように取り組んでいきたい」と話している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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