2014/09/26

【旭化成不】「権利者とともに創る」マンション建て替え事業 旭化成不レジ

旭化成不動産レジデンスは、マンション建て替え事業の取り組みを強化する。住宅請負事業で培った「合意形成力」を強みに高経年マンション建て替え事業を積極的に推進。複雑な権利関係を整理して建て替えを実現し、完成した「アトラス池尻レジデンス」(=写真)やことし着工した「ヴィラシミズ」「河田町住宅」など、着工ベースの実績は20件に達した。この実績は、業界トップクラス。その中でサポートした区分所有者数は約1400組に上る。「複雑な権利関係を自らまとめる力やノウハウを強みに『権利者とともに創るマンション事業』」(渡辺衛男社長)という独自のポジションを拡充し、2024年度には累計建て替え着工100件の達成を目指す。

◆広がる建て替え市場

 「国土交通白書2014」によると、築40年を超えるマンションは約32万戸(13年現在)。10年後の23年には129万戸に増え、公団・公社分譲に加え、民間マンションの建て替えが増加する。
 また、6月のマンション建て替え円滑化法改正は、区分所有の5分の4以上の合意で一括売却できるようになり、特定行政庁の許可で容積率の緩和が認められるなど、耐震性不足のマンション建て替えを後押しする。同社のマンション建替え研究所では、「建て替え市場は確実に広がる」とみる。

◆複雑な権利関係解消

中庭を持つ配棟計画も特徴的なデザインの一つ。「静の庭」からは移設された公園が〝借景〟として臨める
池尻団地の建て替え事業は、首都圏不燃公社が1963年に分譲した5階建て3棟の同団地(東京都世田谷区)を、マンション建て替え円滑化法に基づく組合施行によって建て替えた。従前建物の権利者が約120人に上り、所有権分譲された住宅125戸のほかに借地権分譲された店舗・事務所・倉庫が混在するという複雑な権利関係の解消が最大の課題。都市計画法の一団地の住宅施設の解消と公園用地の付け替えも含め、高いハードルを乗り越え「アトラス池尻レジデンス」(設計・監理=ネクストアーキテクトアンドアソシエイツ、施工=大成建設)として生まれ変わった。渋谷まで1駅の東急田園都市線・池尻大橋駅の近くに誕生したマンションはRC造地下1階地上11階建て延べ約2万㎡、205戸の規模。同社が手掛けた14件目のマンション建て替え事業は、エポックメーキングの1つになる。
 このほか、都市計画法上の一団地の解除と公道の付け替えによって調布富士見町住宅建て替えを具体化した「アトラス調布」、既存不適格・借地権マンションを建て替えた「シンテンビル」など多くの実績を重ねている。

◆実績と将来ビジョン

同社は、建設用地を地権者から購入して建設・分譲する形でのマンション開発事業は原則的に手掛けず、合意形成力を生かして密集市街地の共同化や、法定再開発、マンション建て替え事業といった「権利者とともに創るマンション事業」に特化してきた。05年竣工の「アトラス江戸川アパートメント(旧・同潤会江戸川アパートメント)」を第1号とするマンション建て替えは、現在までの着工累計が20件と業界トップクラス。その建て替え事例を『マンション建替えレポートVol・2』としてまとめた。

旭化成不動産レジデンス建替え実績 21件・20プロジェクト(着工済み)
今後は、「小規模」や「既存不適格」など経済的メリットの少ないマンションや、「地上権(借地権)」といった権利関係が複雑なマンションなど、「これまで以上に合意形成が重要になるケースが増えてくる」(同研究所)。管理組合が事業協力者を選ぶ際にも「住民一人ひとりの納得を得る合意形成力」がより重要視される。こうした中、「多くの実務経験で培ったノウハウや細かな高齢者対応力など当社の人的能力は今後さらに競争力を持つ強みとなる」と考えている。

◆10年後に累計100件

東京・御茶ノ水駅近くに建設中の常設モデルルーム「ATLAS COLLECTION」(外観イメージ)。
管理組合をサポートする〝地域密着型コンサル〟を目指すエリア拠点として活用する
渡辺社長は「利権関係を自らまとめるノウハウを強みにして、『権利者とともに創るマンション事業』を強化し、24年度には累計建て替え着工100件を目指す」考え。そのため、マンション事業の人員を同年度までに現在の倍の「200人体制に増強する」方針だ。また、事業強化の一環として、文京区に建設中の常設モデルルーム「ATLAS COLLECTION」を15年1月にオープン。管理組合向け建て替えセミナーを開催するほかモデルルームも併設し、「地域密着型の営業拠点として活用していく」。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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