工期・コスト・デザインをめぐる議論と混乱を経て新国立競技場の設計者として選ばれた。時間が限られる中で、現在は120人体制で設計が進む。多くの国民が注目するプロジェクトだけに、「みんなが参加した意識を持てる」建築にしたいと意気込む。
2度目の設計者選定となった公募型プロポーザルでは、木材と鉄骨を組み合わせた「和」の表現に注目が集まった。重視したのは公共建築としての「優しさ」だ。「かつての公共建築とは都市のシンボルでありモニュメントだったが、これからの公共建築は国民を守り、癒してくれる『家』のような空間が求められている」と指摘する。
新国立競技場の設計においては、庇を効果的に利用することでそうした安心感を生み出すことを意図した。日本の伝統建築の特徴として「軒裏の斜めの直線によって人間と大地を結びつける技術に長けている」点を意識し、「体が庇に覆われることで、自分が守られているような落ち着く空間」を目指したという。木材の活用も、『家』のような空間を実現する上で最もふさわしい素材と判断したからだ。「公共建築として毎日イベントを開催することはないだろう。しかし、イベントがなくともそこに訪れた人々が楽しい時を過ごせる場にしたい」と語る。 (人)
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