2013/03/10

【現場最前線】3月16日の直通運転へ一晩で切替へ! 東横線代官山駅地下化工事

東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が3月16日、いよいよ始まる。横浜方面から渋谷、新宿、池袋を経て、埼玉西南部に至る首都圏の広域鉄道ネットワークが形成されるほか、渋谷駅周辺再開発事業の全体が動き出す大きな節目でもある。このプロジェクトのかぎとなるのが、東横線渋谷駅~代官山駅間の地下化事業だ。東急建設は15日終電から16日初電までの限られた時間内に、地上の線路と地下に構築した線路をつなげる“総仕上げ"に全社一丸で臨む。

◇切替当日へ秒読み

 地下で営業中の副都心線渋谷駅ホームから、地上にある代官山駅までの区間約1.4㎞を地下化する事業では、既に地下式構造区間約1.2㎞の工事が完了。現在は、取り付け口となる代官山駅付近の第3工区を担当する東急建設が、切替当夜に向けた最終調整と確認作業を進めている。
 現場周辺は、線路沿いに住宅などが近接する密集地で側道も狭い。用地の制約から、一般的な仮線切替方式が使えないため、仮線を設けず、一夜にして営業線の直下に線路を移設する「STRUM(ストラム)工法」を駆使する。いま列車は工事桁上の地上線路を運行しているが、桁下の空間では新しい地下線路が着々と構築されているわけだ。


上部は営業線が走る。その直下で新しい軌道を建設中だ
◇ジャッキアップとダウン

 切替工事では、地上と地下を結ぶ新たな線路を列車が通るに当たり、支障となる工事桁などを取り除く。通常であれば、すべての桁を一気に撤去するが、ここはクレーンを設置できるエリアが限定されている。
 そのため、現場は桁を撤去する区間や、車両が接触しないように桁をジャッキで持ち上げる扛上(こうじょう)区間、桁をジャッキダウンして既存線と新線を連結させる降下区間などに分ける。異なる作業を同時並行で行う難工事だ。カーブもあるため、より高い精度管理が求められる。
 第3工区の施工延長は約273m。渋谷方から順に、残置一部扛上区間、撤去区間、扛上区間、撤去区間、降下区間が並び、横浜方の最後のブロックは、2段積みになっている枕木の上1段を撤去し、レール高さを合わせる砂利降下区間となっている。さらに、現在の仮ホームの撤去作業も併せて実施する。


この先で桁を降下させる予定。切替当日は4時間で接続する
◇わずか4時間での切替作業

 切替当夜に許される作業時間は約4時間。この間には保線や電気工事なども行われるため、現場から一時退避する必要なども生じる。東急建設代官山作業所の浦部克人所長は「土木工事に与えられた時間は正味2時間程度」と説明する。本番では、工事桁を撤去するクレーン7台が各所で一斉に稼働するほか、桁の扛上・降下、仮ホームの撤去作業なども並行して進められる。
 「鉄道会社5社に関係する工事だけに、絶対に迷惑は掛けられない。一番大切なのはチームワーク。常日頃からコミュニケーションをとり、現場の雰囲気づくりに努めている」と浦部所長。当夜は協力会社の作業員を含め、約700人を動員する。
 さらに、発注者の東京急行電鉄を始め、保線工や電気工、電路工なども合わせると、都市部の延長300mに満たないエリアの中で、1200人もの関係者が深夜一斉に動き出す、圧巻の光景が繰り広げられることになる。

◇延べ労働者は8万人

 東急建設が工事着手したのは2005年。延べ労働時間は約58万時間、延べ労働者数は約7万9000人に達した。浦部所長は「3月15日は8年間の集大成。当夜、1200人近くが作業するというのはすごいことだが、ここに来るまでには何万人もの努力があった。社内外のいろいろな人の応援をもらいながら、このプロジェクトを確実に成功させる」と力を込める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月6日
 

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