2013/03/06

【津波避難】鉄骨式、円形式など多様な施設提案 藤原産業

環境・防災設備機器メーカーのフジワラ産業(大阪市西区)は、津波避難タワーや津波シェルターなど、巨大災害時のさまざまな避難方法と製品を開発・提案している。これらの多くは東日本大震災前に藤原充弘社長がアイデアを思いつき、特許を取得していたもの。これまでに納入実績があるのは津波避難用の「タスカルタワーA」のみだが、震災により社会全体の防災意識が高まってきたことで、藤原社長は「やっと動き出してきた」と手応えを感じ、今後はさまざまな商品を積極的に提案していく。
 タスカルタワーは、ステージと主柱、階段、手すりなどで構成する鉄骨式タワー。強度面は京大防災研究所の実証実験で十分な結果が得られている。コンクリート製の避難ビルよりも短期間・低コストで設置できるのも大きな特長だが、「低コストといっても工事費や土地代も含めると避難者1人当たり300万円程度を要する。普及させていくには、まちおこしにつながるような平時も使える施設としなければならない」と考え、その活用法も合わせて提案している。既に展望台としての活用事例があるほか、朝市の会場とするケースもある。
 2004年に1号基を設置し、10年3月までに20基を納入した。東日本大震災以降から3月末までに15基を設置し終える予定だ。販売ペースがあがり、「そのうち2基は民間企業から受注した」ことから、今後の展開に期待を寄せている。


◇直径100mの巨大避難施設

 タワーは小・中人数向けだが、数百人、数千人規模を対象とする大規模津波避難施設も用意している。広大な敷地に予想津波高以上の土を盛り、鉄板とコンクリートで円形や楕円形に囲む形状となっており、開口部から施設に入り、外壁沿いに円周状に設置した進入路を駆けあがって避難できる。
 大規模となるため、施設内にタスカルタワーや避難センター、緊急ヘリポートなどを設けることができ、平時は公園や集客施設など、さまざまな活用が可能だ。
 直径100mの円形施設で、敷地面積7850㎡、収容人員約4000人の場合、設置費用は約10億円(土地代などは別)となる。
 さらに、鉄塔とワイヤーロープで安全な高台に避難するやえん式の簡易施設、堅牢な津波避難用の地中シェルター、道路法施行令の改正(緩和)に伴う津波・洪水避難ステージ付き歩道橋も開発、多様なニーズに応えていく。
 大地震はいつ起きるか分からない。藤原社長は「さまざまなアイデアを発信していくことで、当社の製品に限らず、防災対策が少しでも早く進んでくれれば」と語り、自治体に向けて「人命にかかわることは最優先に予算措置して手を打っていくべきだ」と力を込める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月6日

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