2013/03/03

【BIM】肉声で語り合う シェルパの「Open BIM Cafe」

BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が急速な広がりを見せたこの2年間、設計事務所やゼネコン、メーカーなどのBIM担当者が、最新情報や日ごろの悩み、アイデアを共有している場がある。建築技術者集団のシェルパ(名古屋市)が毎月第3金曜日に東京都中央区の同社東京オフィスで開催している「Open BIM Cafe」だ。
 毎回、2人のゲストによるセミナーと、参加者全員が立食形式で酒を片手に意見交換をする「パワーディスカッション」の2部構成で、2月までに22回を開き、5月には3年目に突入する。
 セミナーでは、これまでに延べ38人が講演した。スピーカーは実力派ぞろい。「実力」とは、つくるモデルの見た目のすごさではない。
 「共通して言えるのは、BIMを使って暗黙知を見える化しているということだ」
 シェルパの高松稔一代表は感心する。BIMの肝は「I」つまり情報であり、「I」は「愛」にも通じる。建物のエンドユーザーのことを思って、専門家が従来は表現し得なかった頭の中の情報をBIMで伝える。そうした本質的な取り組みの発表が多いという。
 講演者は、カフェのような空間でマイクを使わず肉声で語りかける。親密な雰囲気だから話せる苦労話やこぼれ話などの「ここだけの話」が参加者の人気を呼んでいる。
 「誰もが知りたい情報は、肉声でしか聞けないものだ」(高松代表)。
 Cafeの参加者は、各回30人程度。毎月第1営業日に専用サイトで募集すると、最短4時間で応募が定員に達する。これまでに延べ約660人が参加した。「BIM」に興味を抱く発注者や、建設業との連携も検討する異業種の参加も目立ってきた。
 建設プロジェクトの川上から川下にかかわる人が集まるが、取引の話にはならない。発注者も受注者も、重役も新人も、普段会えない者同士が、普段できない話に夢中になり、花が咲く。
 「本当に皆さんが楽しそうにしていただけるので、やりがいがある。でも、皆さんの将来のビジネスの芽は育っているとも信じている」と、裏方を務める今枝睦二プロジェクトリーダーはほほえむ。
 高松代表にとっては、理想の場だった。「肩書きや年代にとらわれずフラットに語り合える場が必要だと思った。自分がこの景色を見たかっただけかも知れない」
 顧客目線の取り組みの共有、異業種連携、フラットな関係--。こうした場の実現も、建築業界の一つのイノベーションなのかもしれない。
 専用サイトはhttp://www.sherpa-net.co.jp/cafe/
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月27日 14面

Related Posts:

  • 国交省がBIMの利点と課題を検証 試行導入した新宿労働総合庁舎で 新宿労働総合庁舎の完成パース  国土交通省官房官庁営繕部は、BIMを試行導入した新宿労働総合庁舎の設計についてメリットなどを分析した。斜線制限の可視化などで地下1層分の工事を節約したり、手戻りの減少などを確認できたという。一方で、発注者側の意志決定のスピードアップや、データ条件の取り決めを強化する必要性などが課題として浮き彫りになった。国では、官庁施設整備にBIMを導入する事例が増えており、今回の結果を踏まえて、さらなる業務の効率化を目指す… Read More
  • smart geometry 2012 ニューヨークでパラメトリック・デザインの国際シンポ  ベントレー・システムズ(Bentley Systems)とスマート・ジオメトリー・グループ(Smart geometry group)が毎年開催している「smart geometry 2012(sg2012)」が米国・ニューヨーク州のトロイで開かれた=写真。sgは、建築を幾何学的な側面から研究する取り組みで、ベントレー社が中心となって米国やヨーロッパで開催を続けている。英国のフォスター・アンド・パートナーズなど著名な組織事務所も多数参加する… Read More
  • 大槌町では復興計画にInfrastructure Modelerが採用 オートデスクの新社長ルイス・グレスパン氏に聞く  建築や土木に加え、製造業など幅広い領域にソフトウエアを提供している米国オートデスク社。日本法人オートデスク(東京都中央区)のルイス・グレスパン社長は「各分野の先導役として、ユーザーをけん引していく」と就任の抱負を語る。建築分野で普及し始めたBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)は、土木を含む社会インフラの新たな生産手法としても注目を集めている。同社のマーケティング戦略を聞いた。 --就任後2カ月が過ぎた  「就任前に部外… Read More
  • ソーラー・デカスロン・ヨーロッパ2012に出場する千葉大の「おもてなしハウス」が完成 「おもてなしハウス」  ことし9月にスペイン・マドリードで開催されるソーラー・デカスロン・ヨーロッパ2012で千葉大が提案する「おもてなしハウス」が同大西千葉キャンパス内に完成、一般公開された。マドリードの大会では10日間で実際に住宅を建てて審査を受けるため、その“予行演習”として今回、キャンパス内での建設となった。公開に合わせて行われた会見で学生代表の田島翔太さんは「模型で考えていたものとおおむね同じものができたと思う」とするとともに「い… Read More
  • BIM用建築パーツを無償提供 ペーパレススタジオジャパン社長の勝目高行氏に聞く サイトのイメージ  建築パーツのBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)データを無償提供するクラウドサービス「ArchiSymphony」(アーキシンフォニー)が登場する。運営するペーパレススタジオジャパン(本社・福岡市)の勝目高行社長は「設計者とメーカーをつなぐサービスとして普及させ、進展する日本のBIMを下支えしていきたい」と強調する。サービス開始は4月末。日本初の試みとなる“BIMクラウド”にスポットを当てた。 勝… Read More

0 コメント :

コメントを投稿