2013/03/12

【現場最前線】福島第一原発付近16.4㌔、来年度開通へ 常磐道復旧工事

震災時に供用していた高速道路で現在も通行止めが続いている個所がある。東京電力福島第一原子力発電所事故で立ち入りが制限されていた福島県広野町の常磐自動車道広野インターチェンジ(IC)から楢葉町を経て同発電所に近い同県富岡町の常磐富岡ICまでの16.4㎞の区間だ。2013年度内の開通へ向けて、崩落した盛土や亀裂の入った本線の復旧工事が行われている大成建設の現場を訪れた。


盛土復旧
◇調査すらできない

 広野IC~常磐富岡IC間では11年3月11日の大地震で盛土の崩落が13カ所、亀裂が入り補修が必要となった路面は同区間全体の約40%に当たる8万4000㎡に及んだ。地震直後の原発事故により半径20㎞圏内にある同区間では調査にも入れない状態が続いていた。
 警戒区域から除外された広野町、楢葉町内の区間の復旧工事に着手したのが昨年3月。原発に近い富岡町は現在も警戒区域に指定され立ち入りが制限されているが、放射線の空間線量が国の基準(毎時3.8マイクロシーベルト以下)を下回り、除染の必要のない場所については同年11月から工事を進めている。
 現在、工事は崩落規模の大きい3カ所の盛土工事と路面の亀裂や陥没が大きい個所の本線復旧を中心に進めており、進捗率は約15%となっている。富岡町内の長さ約500mに及ぶ本線復旧では、舗装のアスファルトを切削し、さらに深さ1mから2mまで掘り起こして路盤から造り直す作業が急ピッチで進んでいる。切削したアスファルトや掘り起こした路盤材などの発生土は放射線量を改めて検査した上で現場で再生利用する計画だ。


作業員は防護服を着用、退場時にはスクリーニングと線量計チェックをする
◇万全の管理で作業員の不安払拭

 常磐富岡ICに近い地域では放射線量が毎時5マイクロシーベルトから6マイクロシーベルトと除染が必要な個所もあり、環境省の直轄除染作業の完了を待って順次復旧工事に着手するとしている。
 工事を担っている大成建設が最も気をつかっているのが作業員の放射線量管理だ。
 施工場所は放射線量が国の基準を下回り除染の必要もなく、防護服も不要だが、「社内の規定に基づいて念には念を入れて管理している」(同社現場監理技術者)という。
 ダンプトラックの運転手や重機のオペレーターも含めてすべての作業員にマスク、手袋とともに防護服も着用させている。さらに、全員に線量計を携帯させ、現場退場時にはスクリーニングと線量計をチェックし、作業員にそのデータを示している。
 また、線量計のデータは3カ月ごとの累計値をそれぞれの会社と作業員個人にも知らせている。「安心して働いてもらえるように努めている」(同)。
 ここで働くすべての人が、この地域の復興に貢献したいという強い気持ちを持って工事に当たっている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月12日

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