2013/03/01

【復興版】災害復旧に生きる情報化施工! 北利根川でミニブルが活躍

東日本大震災では、茨城県や千葉県東部でも地盤沈下などの被害が多発した。千葉、茨城県境を流れる北利根川流域も例外ではなく、堤防が最大約50cm沈下した個所もある。その災害復旧に当たり、情報化施工が威力を発揮している現場が、関東地方整備局霞ヶ浦河川事務所が発注し、2012年10月から進めている「H24潮来管内外災害復旧維持工事」だ。受注した鹿島道路が総合評価方式による入札時に提案。スピードが求められる災害復旧工事にあって平坦性の確保・向上など極めて高い精度で施工が進められている。


施工精度が非常に高い
◇復興の人手不足を解消

 同工事は、北利根川右岸の東関東自動車道から国道101号に架かる橋梁に至る約4.2㎞の堤防盛土(約1万5000m3)と舗装を行うもの。
 現場を率いる鷹觜正哉(たかのはし・まさや)所長は、「震災の影響で人手が不足する中、省力化でき、かつ安全で精度が高い情報化施工を総合評価方式の入札時に提案した」と話す。
 情報化施工は、国土交通省を始め、日本建設機械施工協会や建機メーカー、測量機器メーカー、道路会社などが、いち早くその有効性を捉え、普及に努めているが、一般的な工事まで普及しているとは言い難い。
 こうした中、この現場では、鹿島道路本社、関東支店、現場、協力会社のオペレーターも含めて実践的な活用がされている。
 具体的には、3tクラスのブルドーザーとトータルステーション(TS)で導入。4.2㎞の工区を8分割して盛土や法面整形、転圧、路盤工、張芝などを行っているが、幅約3mの堤防上部での路盤の敷き均しはすべて情報化施工で対応している。
 朝、職員が作成した3次元図面データをブルに設定、川岸にTSを据え付けてオペレーターと打ち合わせた後は、TSが常に情報化ブルのプリズムを無人で追尾し、オペレーターがブルの運転席のモニターを確認しながら単身で施工に当たる。


ブルには復興ステッカーが貼られている
◇一人で敷均し作業

 路盤材を積んだダンプトラックがやってくるとオペレーターは、その経験をもとに撒き出し位置を運転手に指示し、数回に分けて荷下ろしした後、運転席に戻って敷き均す。
 熟練した技術を持つオペレーターも情報化施工について「作業は確実に楽になっている。次の現場でも使ってみたい」と話す。
 情報化施工は、技術が未熟であっても熟練者並みに施工できることがメリットだという見方がほとんどだが、実際には、敷き均す土の配分や順序など、熟練者ならではのノウハウも必要だ。
 鹿島道路関東支店は、本社の工事課、支店の機械課、現場に加え、協力会社まで含めて横断的な展開をしており、「熟練オペレーターにこそ使ってほしい」という。
 災害復旧に求められるニーズと情報化施工が高度に融合したこの現場の工期は3月19日まで。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月28日

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