2013/03/16

【建築】「大阪北御堂」浄土真宗本願寺派本願寺津村別院が改修中

大阪のビジネス街の中心に、「北御堂」の愛称で市民に親しまれている浄土真宗本願寺派 本願寺津村別院がある。この施設は特徴的な近代建築としても知られているが、築後50年以上が経過して老朽化が目立つことから、平成の大改修が行われている。現在は足場に覆われてその外観を見ることはできないが、大改修は10月中に終わり、11月には完成を祝う法要が盛大に営まれ、昔の建築イメージを残した姿がお披露目される。
 北御堂の歴史は古く、1597年に今ある場所へ集会所を移転し、津村御坊と称したのがはじまりとなる。「御堂さんの鐘が聞こえる場所にのれんを張る」を合言葉に、その門前には門徒である多くの商人が集まって船場の町を形成し、商都大阪の礎を築いていった。
 以後、江戸時代には朝鮮通信使の迎賓館、明治時代には大阪鎮台が置かれ、天皇の行在所(仮皇居)となるなど、さまざまな歴史を重ね、今はビジネス街の中心で市民の暮らしを見守っている。大阪のメーンストリート・御堂筋の名称は、約500m離れた場所にある南御堂(真宗大谷派難波別院)と北御堂を結ぶ道であることから命名された。

改修後の内観イメージ

◇戦後RC造で再建 和洋折衷の建物に

 北御堂の施設は、これまで大火や戦災などで2度焼失している。現在の施設は1945年に大阪大空襲で施設を焼失した後に建てられたもので、戦後復興と重なったことから、64年になってようやく再建された。
 設計は建築家の岸田日出刀が担当し、和洋折衷のテイストを持つ鉄筋コンクリート造りの建物となった。規模は地下2階地上5階建てで延べ2万1697㎡。本堂の階下には結婚式場などが入る複合施設として活用されている。敷地は「かつて約6600坪あったが、相愛学園や御堂ビルが建ったことで、現在は約2200坪程度になった」(岡正寿副輪番)とのことだ。

市民からは「北御堂」の愛称で親しまれている。
御堂筋の名称はこの北御堂と南御堂を
結ぶ道であることが由来だ

二次災害の防止へ瓦を下地に打込み

 再建後50年が経過した北御堂の建物では、老朽化によるコンクリートのはく離や滑落など、参拝者への危険が懸念されるようになり、阪神・淡路大震災発生時には本堂の瓦が多数落下した。このため、親鸞聖人七百五十回大遠忌法要の記念事業として平成の大改修に取り組むことになった。設計は蔵建築設計事務所、施工は竹中工務店が担当している。
 改修にあたっては、優しい印象を醸成するためにコンクリートの壁、柱などを木や緑で覆うことなども検討したが、建築価値が高く評価されていることを踏まえ、イメージをそのまま残しながら内外装を全面補修することになった。
 別院の入口部分に描かれている宗教画家・杉本哲郎による壁画『無明と寂光』も以前と同じ場所で来場者を迎える。
 瓦については、地震が起きても絶対に二次災害を起こさないという思いのもと、さまざまな検討を重ねた。その結果、外観は変わらないものの、本葺きをやめて1枚1枚を下地に打ち込んでいく工法で敷き詰めていく。

◇帰宅難民受け入れ 食料なども備蓄へ

 東日本大震災で東京の築地本願寺が帰宅難民者を受け入れたことを踏まえ、「北御堂も大阪の都心部にある大規模施設として、改修後は被災者や帰宅難民などを受け入れられるようにしたい」(同)という。
 詳細は今後検討していくが、本堂や会議室などを活用すれば1000人程度の受け入れが可能と見ており、食料や水、毛布なども備蓄する方針だ。
 また、昨今のエネルギー事情も考慮し、自然光を取り入れる工夫や照明のLED化も行っている。
 「大阪は門徒がつくったまちであり、その誇りを代表する建物として、今後も文化の発信拠点であり続けたい。災害時の受け入れを含め、市民にとっての安らぎの場所にしたい」(同)と語る。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年3月8日

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