2011/12/21

記者座談会・2011年を振り返る 設計、コンサル、設備、メーカー

A 建築界にとって、ことし最大のニュースは、やっぱりUIA(国際建築家連合)2011東京大会の成功だね。
B 日本建築界の長年の夢だったからね。東日本大震災の影響もあって、当初見込んでいたより参加者は少なくなってしまったけど、それでも海外から2000人近くが訪れた。プログラムも充実していたし、大きなトラブルもなく終えることができたと思う。
A この大会を機に建築界は変わっていくのかな。
B 急には変わらないだろう。今回は国内、特に若い人の参加が少なかった。せっかくの国際大会に若者が興味を示さない状況をみると、これからもっと進むと思われる国際化への対応が課題といえる。それともう一つ、団体間の連携、連帯がどう進むのかがポイントだ。共同宣言が絵に描いた餅にならないよう、継続して協議の場をつくらないとだめだね。
A 建設コンサルタント業界はどうだったの。
C ことし最も大きな話題になったのは、7月の長大による基礎地盤コンサルタンツの買収だね。買収という意味では、2004年に日本工営が玉野総合コンサルタントを傘下に取り入れて以来の大型買収と言えるのではないだろうか。
A それにしてもことしは、M&A(企業の合併・買収)や提携が目立ったね。
C 6月に日本工営がアイドールエンジニヤリングから事業譲受、10月にACKグループとオリエンタルコンサルタンツ、パシフィックコンサルタンツグループの3社による海外民間市場をにらんだ提携、12月に建設技術研究所と建設技研インターナショナル、トーニチコンサルタントの3社による海外鉄道市場をメーンとした提携など、大手の動きが活発だったのも特徴だ。当面は東日本大震災による需要増が見込まれるが、その先の将来を見据え、合従連衡はまだまだ来年も続きそうだ。
A 設備業界はどうだった?
D 「節電の夏」に象徴されるが、電気も空調も昇降機もユーザーの対応に追われたようだ。空気調和・衛生工学会や日本空調衛生工事業協会が喫緊の節電対策、中長期にわたる節電対策を提案した。
A エネルギー消費の中でも空調はウエートが高いからね。
D 急場は「がまん」で凌いだ感もあるが、この冬もそうだけど、来夏ばかりか、しばらくは電力の需給バランスに不安が残るだけに、息の長い取り組みになりそうだし、それだけにユーザーの関心も高い。
A 公益法人改革の動きもあった。
D 4月に日本電設工業協会(林喬会長)が大手全国団体の先陣を切って一般社団法人に移行した。電子理事会の導入で運営を効率化したり、秋の会員大会では登録基幹技能者の処遇改善案を打ち出した。
A メーカー関連で気になる動きは?
E やはり4月1日付で発足したLIXILが一つのエポックだった。トステム、INAX、新日軽、サンウエーブ工業、東洋エクステリアの5社が合併して、国内市場向けの製造業からグローバルな「住宅総合ソリューション事業」へと挑戦を始めた。
A ダイナミックな動きだったね。
E 8月1日付でLIXIL社長に就任した藤森義明氏は、前任が日本ゼネラル・エレクトリック(GE)代表取締役会長。米国GE最高経営責任者(CEO)だったジャック・ウェルチ氏から多大な影響を受けたという。藤森社長は12月初旬、イタリア大手カーテンウオールメーカー「ペルマスティリーザ」を完全子会社化、グローバル戦略展開に大胆さを発揮した。

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