前田建設によるボランティア活動(陸前高田市、津端晃カメラマン撮影) |
まず必要となるのが復興特区計画の申請だ。さまざまな規制緩和や税制などの優遇措置、また事業の原資となる復興交付金を得るためには復興推進計画と復興整備計画、復興交付金事業計画の3つの計画を作成しなければならない。規模が小さい自治体にとっては決して低いとは言えないハードルとなる。
このため、民間企業が自治体に計画を提案することも認めるなど、対象となる222自治体が来年1月から申請できるよう配慮している。
とはいえ、被災自治体の首長にとって難問は山積している。例えば漁業や水産加工を生業(なりわい)とする沿岸部では地震によって地盤沈下した地域をかさ上げすることに住民からの異論はないものの、高台移転するか現地再建かで住民の合意形成が難航するケースも出ている。
震災以前から抱えていた過疎と高齢化という問題は、震災によって一段と深刻なものとなっている。被災地の多くの首長が「国の支援でいくらきれいな街をつくっても人がいなければ存続できない。いかに産業をつくるか、だ。それが一番難しい」と頭を抱える。地域経済再生のシナリオをどう描くか。それが今後最大の課題となるのは間違いない。
ただし、これは被災地に限ったことではないことも事実。日本全体が人口減少と急速な高齢化が進む中、住民の減少による地域経済や財政規模の縮小、また高齢化による負担増に直面している被災地域はわが国の地方都市問題の縮図でもある。
農業や漁業を生産・漁獲だけでなく加工・販売まで付加価値をつけることで従来の1次産業から新たな産業である6次産業化することや、再生可能エネルギー導入を引き金に、産業誘致を視野に入れる複数の意欲的な自治体首長からも「基幹産業といっても農業や漁業の就労人口割合はそう多くない。当面、復旧・復興事業などで建設業が地域経済をけん引することに期待している」といった声が上がる。
もちろん、中長期的には「新たな産業が絶対必要」であり、「今後、復旧・復興を通じた地域の生き残り競争になるのはやむを得ない。競争に負けた地域の住民は気の毒だが、これから本当に首長の政治資質が問われることになる」と見通す首長も。
一方、今回の震災は全国各地の自治体が取り組む公共事業の優先順位にも大きな影響を与えた。震災前には財政難を理由に対応が遅れていた庁舎の耐震化が各地で急ピッチに進み、電源喪失や大津波を想定した行政機能の業務継続計画(BCP)への取り組みも加速している。真に必要な、また喫緊の社会資本整備として、防災・減災への対応が求められている。
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