2011/12/14

型枠大工の高齢化加速が実態調査で明らかに/10年後は55歳以上が4割超

型枠大工就労者の未来予測
 型枠大工の減少と高齢化が加速しているが、日本建設大工工事業協会(三野輪賢二会長)がまとめた型枠大工雇用実態調査で、実態がさらに明らかになった。調査結果では、その要因として3K(きつい、汚い、危険)よりも低賃金を挙げ、東日本大震災からの復興にも影響を及ぼすことを危惧(きぐ)する。
 調査は、8月31日を調査日として、9月15日から10月21日に調査用紙を回収、非会員2社を含む187社から回答を得た。回答数が異なるため単純に比較することは難しいが、就業者数は前回調査が1万1637人で、今回の調査では1万0373人と、回答企業数の減少を勘案しても大幅に縮減している。
 年齢別の構成比率をみると、45歳から54歳が全体の24・9%を占め最も多く、次いで55歳から64歳の24・4%、35歳から44歳の23・8%。65歳から74歳は前回調査の9・2%から6・4%に2・8ポイント低下したものの、15歳から24歳の比率も6・6%から5・5%に1・1ポイント低下している。55歳以上が30・8%と型枠大工就労者の約3分の1を占める。
 総務省統計局がまとめている、労働人口の年齢層構成比と比較してみると、全産業の平均値で34歳までの就労者の占める割合が27・5%なのに対し、型枠工は21%に過ぎない。一方、28・7%と全産業の平均が3割を下回っているのに対し、55歳以上は3割を超える。
 また、現在、中核となっている35―54歳の年齢層が5割を占めていることから、5年、10年後には一層、高齢化が進んでいることは確実で、若年者が入職を希望する魅力のある労働条件、労働環境を早期に実現し、技術・技能の継承を図る必要がある。

東北では震災復旧も影響

 東北地域の型枠工減少の要因には、東日本大震災の復旧も影響しているという。震災に伴い、工事が中断・遅延する間に、がれき処理や復旧工事に伴う土木・住宅関連の求人が増加していることもあり、型枠技能工の賃金との格差が拡大したため、他職への転職や引き抜きが増加している。さらに、首都圏の型枠大工工事業者によると、東北の出身者からは「ことしの帰省以降、地元に戻りたい」との申し出が増加しているとの報告もあるということから、首都圏での型枠大工の不足も深刻さを増すことが懸念される。
 調査結果から、型枠技能工の年間平均賃金をシミュレーションし、交通費や工具、作業着などの年間必要経費を36万円として控除してみると、職長レベルで年収275万円、技能工で233万円程度にしかならないというのが現状で、低賃金が型枠工事業界の疲弊につながっていることは明らかだ。
 型枠工事就労者数の予測では、5年後の2016年には55歳以上が37%を占め、10年後の21年には4割を超えると見通す。逆に15―44歳は39%、34%と、体力・気力とも脂の乗る20歳代後半から45歳くらいまでの世代の型枠大工はますますいなくなり、3人に1人となる勘定で、現場の生産性にも大きく影響してくることは想像するに難しくない。

Related Posts:

  • 今度は圧送技能者も不足/年収は400万円割れ、ポンプ車も更新できず 生コン圧送にも技能者不足が (写真と本文は関係ありません)  鉄筋工、型枠工に引き続き、コンクリート圧送業にも、技能者不足、技術伝承の危機が訪れている。これは、全国コンクリート圧送事業団体連合会(佐藤勝彦会長)がまとめた「2010年度のコンクリート圧送事業経営実態アンケート調査結果報告書」で明らかになったもの。報告書を読み解くと、調査開始以来初めて圧送技能者の年間給与手当の平均額が400万円を割り込み、技能者数も20歳代の構成比率が16… Read More
  • デンマークに巨大タコ出現!? タコの滑り台、デンマークに出現――。首都・コペンハーゲン市に整備されている大規模公園内に、日本ではなじみの深いタコの滑り台が設置された。左官工事業の西谷工業(東京都中央区)と望月工業(東京都新宿区)の2社から左官職人3人が5月にコペンハーゲン市に赴き、タコの滑り台(縦6m×横10m)を現地の作業員と製作した。日本の伝統工法の「左官」が、デンマークで注目されている。  コペンハーゲン市が公園の整備を計画する中で、設計を担当する設計事務所が、インタ… Read More
  • 登録基幹技能者の処遇改善/50歳年収650万以上目指す/電設協 日本電設工業協会(林喬会長)は、登録基幹技能者の処遇改善に乗り出す。「基幹技能者の資格者を対象に、仕組み(案)をまとめた。電気技能者(電工)の目標年収として、50歳で現行の平均年収を50万円上積みし、650万円以上を目指すとした。13日、名古屋市で開いた2011年度会員大会で人材委員会(委員長・菅沼敬行住友電設社長)の原洋二副委員長が基調報告し、大手会員企業から具体的な仕組み作りに着手してもらうことを提案した。すでに数社が検討に入っているという… Read More
  • とび技能検定実技に146人が挑戦/近畿躯体がことしも実施 実技試験の模様  近畿建設躯体工業協同組合(山本正憲理事長)は3日間かけて、兵庫県三田市の三田建設技能研修センター実習場で「2011年度とび技能検定実技試験」を行った。今回の受検者数は1級144人、2級2人の計146人。初日の9日には猛暑の中、58人が合格を目指して課題に取り組んだ=写真。  この試験は、大阪府職業能力開発協会からの委嘱により同組合が実施している。受検者90分以内に鋼管パイプで小屋を組み立てる。時間内に仕上げること以外に… Read More
  • 地方自治体に基幹技能者への加点措置が拡大中/大阪府が2件で試行、長崎、東京でも動き 地方自治体で、基幹技能者と一級技能士の公共工事への活用が本格化してきた。大阪府が2件の建築工事に、総合評価制度で基幹技能者の配置に加点措置を試行採用したほか、長崎県はすでに本格的に実施している。また昨年末には東京都が公園整備で基幹技能者の活用を試行しており、今後全国の自治体で同様の加点を行う可能性が広がってきた。  今回大阪府が基幹技能者の配置を求めるのは「府立高等職業技術専門校北部校(仮称)新築工事」と「府立視覚支援学校改築工事」の一般競争入… Read More

0 コメント :

コメントを投稿