2011/12/08

追悼寄稿・林昌二氏へ/「職能確立へ基礎固め」日本建築家協会会長・芦原太郎

 林昌二先生の突然の訃報に驚いています。
 林先生は、1990年5月から2年間、社団法人日本建築家協会(JIA)の第3代会長の重責を担われました。当時、日建設計という大手組織設計事務所の副社長職と兼務されており、そのご苦労は計り知れないものがあったと思います。
 林先生自身、日本を代表する建築家としても、素晴らしい作品を残されました。中でも東京・竹橋の「パレスサイドビル」は日本のモダニズム建築を代表するものです。そのほか、「ポーラ五反田ビル」「新宿NSビル」をはじめ、設計された数々の著名な建築は、歳月を経ても、いまなお人々とともに生き続けています。
 組織事務所の経営に関しても、卓越した経営能力とアイデアで組織事務所の設計の質を高め、東京地区での経営基盤を確立し、さらに国際的総合設計事務所に発展させた経営手腕にも目を見張るものがあります。
 私たちのJIAの会長としては建築家の職能確立に向けて、文字通り私たちの先頭に立って活躍してくださいました。JIAの設立間もない時代、組織や運営のあり方はじめ、JIAの基礎固めをされるとともに、JIAが創設した建築家資格制度(登録建築家)の原型となる欧米の資格制度の紹介、建築家の地位向上のための建築士法改正への努力、そして、設計競技方法の改善への運動を積極的に進められました。
 建築家の国際交流の面においても大きな貢献をされました。JIAの「建築家国際交流基金」創設の中心メンバーとして、国際活動の経済基盤を確実な形に残されました。また、今秋開催の「UIA建築家大会2011東京」は大成功のうちに終了しましたが、これは林先生がJIA会長時代、1991年にカナダモントリオールでのUIA総会で日本での開催を立候補されたことがそもそもの始まりです。建築家の長年の夢でもあった東京大会を見届けられたかのような林先生のご逝去でした。
 後に続く私たち建築家は、林先生の遺志を受け継ぎ、若者が進んで建築設計界を志すことができるよう環境整備を図り、建築設計界をますます発展させることに力を合わせて邁進して行きたいと思います。
 私たちに楽しくも厳しい建築家人生を示していただいた林先生、奥様の雅子さんとご一緒に安らかにおやすみください。

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