故黒川紀章氏が設計した中銀(なかぎん)カプセルタワービル(東京都中央区)のモデルルームが埼玉県立近代美術館に寄贈されることが決まった。東北大大学院の五十嵐太郎教授が仲立ちして、中銀ビルディングから贈られる。カプセルは現在、森美術館で開催中の「メタボリズムの未来都市展」に展示されているが、展示期間が終わる来年1月15日以降、美術館に移送される。同美術館では「当美術館は黒川氏が初めて設計した美術館であり、最高のクリスマスプレゼントになった」と話している。
中銀カプセルタワーは、1972年に大成建設の施工で完成、工場製作の住居カプセルをSRC造のタワーにボルトで固定している。時代の変化や老朽化に応じてカプセルを取り替え、新陳代謝を繰り返していくという考え方で建設され、「メタボリシズム(新陳代謝)」思想を代表する建築だ。
規模は、SRC一部S造地下1階で、地上は11階建てと13階建ての2棟構成になっている。延べ床面積は3091㎡で、建築面積429㎡。
それぞれA棟、B棟と呼ばれ、1階部分はエントランス共用部で、エレベーターとそれをらせん状に巻く階段から成るSRC造のコンクリートコアシャフトが2本建て込まれ、そのコアの周囲に2本の高張力ボルトのみで個々のカプセルが取り付けられている。
完成から40年近くが経過し、雨漏りや配管トラブルなどが相次いでおり、建て替える方針だ。
このビルの保存については、ドコモモ(DOCOMOMO)が2005年に黒川氏宛に書簡を送っており、97年の国際運営委員会でも、ユネスコ世界遺産委員会に提出する国際的に重要な建物の推薦リストに挙げられている。日本建築家協会(JIA)、日本建築士会連合会、DOCOMOMO日本支部も保存要望を提出していた。
五十嵐氏は自身のツイッターで「メタボリズム展終了後に行く先がなかったと聞き、埼玉県立近代美術館につないだところ、無事に受け入れが決まったようだ。思いがけず、現代建築の保存に貢献することができた」とつぶやいている。
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