2011/12/07

埼玉のテシマ設計。自邸兼事務所/仲間でにぎわう“たまり場”を創出


 スリット状の窓を外部から見える位置に配置。家庭の温かい光を屋外にもれ出させ、建物自体が照明器具になるようにした。テシマ設計を主宰する手島亙氏の自邸兼事務所(埼玉県宮代町)は、夜中の街に灯台のように明かりをともし、夜道を行き交う人々に安心感を与えている。
 建物は木造2階建て。テラスや庇を随所に配置することで、外部と内部の中間領域を設けた。この空間が、生活の雰囲気を外部ににじみ出すだけでなく、外部から人を自然に引き込む魅力を持たせている。
 設計した手島代表は「生活に外部を入り込ませる『ごたまぜ感』を出すことで日常的ではない楽しさを発見できる」効果を意図したという。玄関にもスリットをランダムに施し、内部の光が訪問客を出迎えるようにしている。
 外観は、自身が幼少期を過ごし、事務所として使用してきた生家のたたずまいを継承。トタン外壁を現代風にアレンジし、手作業で凹凸を付けた黒色のトタンが、周囲の空間とメリハリを醸し出している。
 構造材には「地元産の杉を使った。気候条件に対応する粘り強さを感じる」とも。また、沖縄産の和紙・月桃紙を壁紙に使い、窓には障子を配置して柔らかさを演出した。古い電車の木造建具を窓枠に採用するなど遊び心もそこかしこに。
 住宅部分では一般の人も参加できる見学会や手作りコンサートを開催。「“たまり場”を意識した」と言うように、他者への優しさがにじみ出る建物だからこそ、設計関係者にとどまらず地域活動の仲間で常ににぎわう。

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