2011/12/09

記者座談会・被災地の入札不調は技術者不足が要因

 東日本大震災の復旧・復興工事の発注が本格化してきたけど、応札者不在の入札不調が急増しているようだね。
 今のところ、宮城県では明らかに不調が多いけど、岩手県はまだ発注が多くない。地域全体的には、まだせっぱ詰まっているという感じではないようだ。ただ、東北地方整備局の発注などが本格化する年明けの発注では、応札者不在の問題が本当に深刻化するかもしれないという不安が、地元にはある。
 原因は、技術者と技能者の不足という話だけど。
 不安の要因の一つは、技術者・技能者が足りなくなるかもしれないということ。今起きている不調の要因は、技術者は建設業法の「3カ月雇用」の規定があるから、入札に参加したくても、専任する技術者がもういないという話がある。でも、本当に専任する技術者が不足している企業もあるだろうけど、専任の技術者はいるけど入札に参加する工事を選んでいるという話もある。もし、もっと利益の出る工事を、と考えて応札を控えているなら、それは発注ロットの設定方法とか、発注者側の問題だ。
 コストアップ要因を見据えて応札しないとか、利益が上がらない工事には参加しないという意志を企業側が入札不参加という形で表現するのは良い傾向だ。まともな感覚になったとも言える。
 発注者側の東北地方整備局は、復旧・復興関連工事の入札の特例として、分任官契約を6億9000万円まで拡大して、一部の土木工事では本来、B等級対象の工事にC等級も参加できるようにする。でも、これはあくまで特例で、今のところ件数はかなり限られている。国交省直轄ではまだ災害査定が終わってないため、予算の個所付けがされていないこともあって大規模工事はまだこれからだ。
 その対応に地元業界から「非常に助かる」という声が聞こえてきた。通常ならC等級の工事2件のものを、B等級工事1件にしてC等級企業が応札できるってことだから、必要な技術者数が減るってことだね。それでも、整備局と県、市の発注が一斉に出始めると、県内だけでは技術者が足りなくなると心配する人もいた。
 技術者不足も心配だけど、もっと深刻なのは技能者不足だ。労務費が上がることを見越して被災地外の仕事は請けないようにしているという話を聞いた。すでにがれき処理では1日当たり3万円を提示しているという噂もある。被災地では、労務費が本当に上昇するなら、発注者が早く予定価格に反映しないと、企業側は苦しくなるばっかりだ。被災地に技能労働者が流れるため、ほかの地域での入札で不調が続発するかもしれないという話もある。だからって、育成に時間がかかる技能労働者を今すぐ大増員できる訳ではない。国交省や自治体は、真剣に技能労働者不足の対応を考えないと、来夏には「日本全国、不調の嵐」ってことになりかねない。

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