2013/02/27

【現場最前線】“雪の新潟"にフラットな屋根 張弦梁構造の「新津総合体育館」

新潟市が秋葉区(旧新津市)に建設を進めている(仮称)新津総合体育館。脇を通る国道から、林立する鉄骨が目に飛び込んできたのが昨年、酷暑のころ。周辺の田園が白く様変わりしたいま、仮設足場のシート越しにうかがえる屋根形状はフラットで、“雪の新潟"のアリーナとしては珍しい。ことし7月の完成に向け作業が佳境を迎えている現場をのぞいた。

完成予想
「躯体などの職人不足で工程の調整が大変だった」。建築施工を担当する本間組・水倉組・近藤組JVの喜藤一幸所長(本間組)は建て方作業を振り返る。ガラスのカーテンウオールで緩いRを描く外周部分の支柱など、意匠的に構造部材を表わしている部分が多いため、常に仕上がりのことも打ち合わせながら進めた。さらに支柱の長さも場所によって異なるため、全体を複数工区に分けて施工。これに職人確保の調整が加わり、工程は輻輳(ふくそう)し管理は困難を極めたが、「積極的にコミュニケーションを取りながら手戻りのないよう、段取りを心掛けた」という。

◇複雑工程 コミュニケーションで克服

 同施設は、秋葉区程島地内で2011年度に着工した。新津武道館に隣接するほか、周辺には秋葉区役所など公共施設が集積している。区民の生涯スポーツ活動や健康づくりのため、多様化するニーズに対応した利用しやすい施設を目指している。規模はS一部RC・SRC造2階建て延べ5979㎡。設計は久米設計。
 アリーナは張弦梁構造で大空間を生み出した。最長36mのスパンで12本の梁を渡しており、バスケットボールコート3面分の広さとバレーボール公認の高さも確保しながら、同構造の採用により、最高高さを15.8mに抑えることができ、フラットな屋根も実現。周辺への圧迫感を軽減するとともに、狭い敷地内での落雪問題にも対応できる。
 外壁にはポリカーボネートの半透明断熱パネルを採用するとともに、ガラスも多用。内部の多目的ルーム、トレーニングコーナーもガラスで「見える化」しており、建物2階の外周部をめぐる長さ約250mのランニングコースからは、屋外やアリーナでの競技だけでなく、屋内で行われているさまざまな活動も見ることができる。
 工事は約60%(1月末現在)の進捗で、7月中旬完成の予定だ。喜藤所長は「現在は外装工事がメーン作業となっているが、ことしは雪が少なく大変助かっている。今後、仕上げ工事が進むと取り合い作業が増えるため、より一層連絡調整を密にし、最後まで安全第一で取り組みたい」と気を引き締める。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年2月27日


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