2014/06/22

【本】開発コンサルの記録 『ジャカルタ漁港物語 ともに歩んだ40年』

1978年の現地調査に参加してから、1つのプロジェクトに36年間携わってきた開発コンサルタントの記録である。海外の事業はどのような流れで進み、どんなトラブルや困難があり、どう対処すべきかなどが参考になる。

 ジャカルタ漁港は、円借款で第1期工事が79年にスタートした。防波堤の杭には竹を使用、その上に竹マットを敷き、捨て石、被覆石、コンクリートブロックを設置する工法を採用した。現地で簡単に調達できる竹杭・竹マットの護岸・防波堤は、現在でも十分に機能しているため、東南アジアで有用な工法と指摘している。
 事業は第4期(96-2002年)までだが、地下水の過剰くみ上げが原因で地盤沈下が起きた。改善対策となるリハビリ事業が05-12年まで行われたことで、「子どもが病気から回復したような安心感」を抱いた。
 堅い話ばかりでなく、現地で体験した幽霊の存在、インドネシアから日本にマグロが空輸されるようになったきっかけなどのエピソードも盛り込んでいる。
 著者はパシフィックコンサルタンツインターナショナルに入社、08年の事業譲渡でオリエンタルコンサルタンツに転籍した。
 (佐伯印刷出版事業部、1500円+税)
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