2014/06/01

【ZEH】千葉大が再びソーラー・デカスロン・ヨーロッパに挑む

キッチン・水回り・空調設備など居住に必要な機能を箱型にユニット化し、それをコアとして居住者が組み合わせて自由に住宅をデザインできる
千葉大学が6月にフランス・ベルサイユで開催されるソーラー・デカスロン・ヨーロッパ2014にゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の「ルネ・ハウス」で挑む。前回のマドリード大会に続き2度目の出場だ。「優勝を目指している」と力強く語るのは、同大大学院修士2年の上田一樹さん。プロジェクトリーダーを務めた川瀬貴晴同大教授のもと、「ルネ・ハウス」の意匠設計を担当した。建築の環境配慮が必須要素となった現代において求められる新たなZEHとは何か。設計に込めた思いを聞いた。

 ソーラー・デカスロンは米国エネルギー省が主催する国際大会。今回はベルサイユ宮殿に隣接した公園に住宅を実際に建設し、「都市」をテーマにZEHの性能を世界各国の大学生で構成する20チームが競い合う。評価項目はデザイン、市場性、工学性能、コスト、快適性、エネルギー収支など10項目だ。
 「ルネ・ハウス」もまた、ZEHを実現するため太陽電池パネルや太陽熱集熱パネルを設置し、エネルギーを近隣の住民と共有できるようにするなど創蓄エネルギーの側面でさまざまな工夫を凝らしている。しかし最大の特徴は、キッチン・水回り・空調設備など居住に必要な機能を箱型にユニット化し、それをコアとして居住者が組み合わせて自由に住宅をデザインする「アーバンシード」というアイデアにある。「地域性に応じて変えることのできる部分を残しておくことで、その地域にふさわしい住宅になる」と上田さんは語る。
 出展する「ルネ・ハウス」が想定する敷地条件は、東日本大震災で被災した岩手県陸前高田市内の高台だ。「都市の復興」という視点から多彩な使用法のある復興住宅を目指し、四隅にはコアを配置、内部空間を可変性のある仕切りで分割できる構成となっている。「復興のフェーズに応じて、地域コミュニティーの拠点から恒久的な復興住宅にまで使い方を変えられるよう心掛けた」という。

ルネ・ハウスの外観イメージ
注目したのは、高台移転によって必然的に生み出される住宅の「過密性」だ。通常、過密住宅は改善すべき問題として取り上げられるが、千葉大では「過密を肯定的にとらえ、それによって得られるコミュニケーションやエネルギーのロスを減らすといったメリットを生かした」という。
 また川瀬教授は今回のコンセプトの背景に、震災後、場所の確保や資材の不足といった理由で住宅建設が遅れた状況があると指摘する。「『ルネ・ハウス』は持ってきたコアを現地の素材でつなぎ合わせるだけでその地域にふさわしい住宅をつくることができる」ため、「高性能な住宅を素早く建てられる」からだ。
 既に「ルネ・ハウス」の建設資材はフランスへと発送した。これからいよいよ各大学が提案した住宅の建設が始まり、6月27日の開会式を迎える。上田さんは「画一的な住宅供給ではなく、地元のコミュニティーや技術、住む人の力に頼って建設する人間的な住宅供給になった。新たな住宅供給のあり方にも踏み込むことができたと思うので、ぜひ優勝を勝ち取りたい」と意気込みを語る。
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