2014/06/06

【記者座談会】“オール・ジャパン”で挑む新国立競技場 火種は消えたか

日本スポーツ振興センター(JSC)が5月28日に開いた国利t競技場将来構想有識者会議では国際コンペの審査委員長も務めた建築家の安藤忠雄氏が、批判に対してしっかり対応する必要性を強調、他の委員も同調した
A 新国立競技場の基本設計がまとまったが。
B 施設規模や景観問題が注目されたけど、構造や設備面にも触れてみたい。まず、開閉式屋根。基本設計に向け、利用者の立場から強く設置を求めたのは有識者会議の総意だった。背景には、コンサートなどの文化的利用と、音響に配慮した多機能型スタジアムとしての位置付けがある。それだけにラグビーワールドカップや東京五輪後の利用拡充には近隣への音漏れ対策が最重要課題になるだろう。
C スタンド建具による遮音に加えて、固定屋根は「遮音用膜+吸音材」が基本としている。芝の育成を考えて南面に透光性材を使っているが、イベント時は吸音膜を閉じる。開閉式遮音装置部も「遮音用膜+吸音材」が基本となる。大空間における音響性能をより高めるため、実施設計段階で音響計画の詳細設計を行うようだ。
B 観客の快適性を高める座席空調や水の気化熱(自然エネルギー)を積極的に利用した間接気化冷却の空調システムが特徴的だ。芝の育成も重要で、ハイブリッド換気計画やポップアップ式散水設備、地中温度制御システム、土壌空調交換システムが計画されている。 
C 折り畳み膜構造の「開閉式遮音装置(屋根)」の採用など、膜構造のメーカーなどに活躍の場が生まれた。競技用照明設備、大型映像設備、免震構造など、設計者、建築、設備など各施工者、さらにメーカーの技術を結集し、“オール・ジャパン”で建設に挑むことになる。
A ところで、基本設計に対する建築設計界の反応は。
D 設計への評価以前に、計画そのものに対する疑問や疑義への回答や情報開示がないまま計画が進むことに憤りを感じているといったところだと思う。主要な建築関係団体からは規模の再検討や解体延期を求める要望書が提出されているが、これも建設反対というよりは、指摘されている不安が懸念に過ぎないなら、それを説明してほしいということだ。ただ、東京以外の地域では関心は薄いし、東京でも若手や中堅建築家の意見表明が少ないように感じる。意見がないのは、消極的賛成ということなのだろう。
B 国際デザインコンペの報告書がまとまり参加者がすべて公表され、審査過程も明らかになった。参加者にとっては重要なことでJSCもオープンにすることが責務と言っていた。ある意味、透明性が確保されているようにも思うが。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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