2014/06/15

【現場最前線】オペレーターの妙技が支える 既設ボックスカルバート拡幅工事

東京メトロ有楽町線の小竹向原駅と千川駅の間で、地下に設置済みのボックスカルバートを拡幅するという珍しい工事が進行している。佐藤工業・熊谷組・大日本土木JVが施工を担う有楽町線小竹向原・千川間連絡線設置向原工区土木工事は、有楽町線と副都心線の平面交差を解消するため、ボックスカルバートを拡幅し、新たに連絡線を設置する。営業線近接工事のため施工上の制約は少なくないが、工期短縮に向けた創意工夫を随所に織り込んでいる。

 小竹向原・千川駅間では、有楽町線と副都心線が平面交差しているため、どちらかが交差部を通過する際、もう一方は一時停止して通過待ちをしなければならない。このため、平面交差を解消する新たな連絡線を設置する。連絡線によって遅延の原因を解消できる。

ボックスカルバートを拡幅し既設側壁を撤去
事業全体は3工区に分け、このうち佐藤工業JVの工区は開削工法で2層構造のボックスカルバートを拡幅する。深夜作業となる既設壁の撤去ではワイヤーソーを使い、5t未満のブロックに切り出して地上に搬出する。切り出したブロックの運搬には当初フォークリフトを検討していたものの、作業効率や安全性を踏まえて専用の特殊台車を作製した。ワイヤーソーによる解体作業はオペレーターの技量による部分が大きいが、「優秀なオペレーターがそろい、非常に恵まれていた」(佐藤工業JVの岩橋公男所長)。工期短縮にも貢献している。
 ボックスカルバートのスパン拡大に伴い床を補強する必要があるが、この補強方法にも工期短縮に向けた創意工夫を織り込んだ。下床版の補強ではウォータージェットで既存躯体側を削孔してからアンカーを設置しているが、5mもの削孔は前例がなかったため、事前に試験を行って施工性を確認した。「削孔時間を大幅に短縮できた上、既存鉄筋を残しながらの削孔が可能になった」(岩橋所長)というメリットは大きい。さらに、高圧水がコンクリートの目荒らしをしてくれるためアンカーの定着も良好だ。
 一方、中床の仮受けでは、上床からPC鋼棒による吊り補強を採用した。本来であれば仮支柱で下から支えたいところだが、施工スペース上の制約からできなかった。吊り補強にあたっては上床に桁を設け、中床のPC鋼棒接続部はコンクリートを増し打ちしてアンカーで定着させている。

工事概要を説明する展示室は子どもにも鉄道マニアにも人気
この現場では東京メトロの意向もあり、近隣住民とのコミュニケーションを重視しているのも大きな特徴の1つ。鉄道模型を使って工事概要などを分かりやすく説明する専用の展示室を設置。展示室には、子どもが遊ぶスペースを確保したほか、建設業のダイナミズムに触れることができる書籍やビデオなども充実させた。「子ども連れのリピーターも多い。遠方から訪ねてくれる鉄道マニアもいる」(岩橋所長)という。来場者数は延べ1万3千人を超えた。
 このほか近隣の学校や住民の現場見学なども積極的に受け入れており、現場の仮囲いには子どもたちが描いた絵を掲示している。こうした取り組みの背景には「現場から建設業のイメージを変えていく」という岩橋所長の熱い思いがある。
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