2014/06/15

【続報!】白亜の寺院「新宿瑠璃光院白蓮華堂」 設計の竹山氏に聞く


1階部分が極端にくびれ、2階部分から大きく膨らんだ形状、ホワイトコンクリート打ち放しの外壁、不規則に並んだ小さな窓。東京・新宿駅に隣接するオフィス街の一角に、独特のデザインが目を引く寺院「新宿瑠璃光院白蓮華堂」が完成した。
【執筆者から:奇抜なデザインに目が向きがちですが、ディティールへのこだわりゆえか新宿のビル群のなかに屹立する様子は周囲のまちなみにとけ込んでいます。近寄るほどに細部へのこだわりに気づかされる印象的な建築でした】

竹山 聖氏(設計組織アモルフ)
「道場、美術館、コンサートホール、学校、図書館といった機能を持っているのが元来の寺院のあり方。近代になって分散してしまったそれらの機能をもう一度統合し、新しい文化の拠点となることを目指した」。そう語るのは、設計を担当した建築家の竹山聖氏(設計組織アモルフ)。
 設計において特に重視したのは「『無為』の時間の空間化」だった。「人が自分自身について考えるのは、図書館で読書をする時や美術館で絵画を見ている時だけではない」と語り、具体的な機能を持たない空間を設ける重要性を指摘。中心には4階から6階までの吹き抜け多目的空間「空ノ間」を設置し、それを本堂や如来堂が囲む構成とした。

本堂
白書院
白ノ回廊
根底にあるのは「建築を機能だけで考えるのはつまらない」という理念だ。「ただぼんやりと空間のスケール感や光を感じる『無為』の場所は、人間が本来の姿を取り戻す場所である」と強調。その上で、建築も人間も「常に目的意識を持って何かのために生きるのではなく、ふと建築や自分の身体について考える寄り道や道草が必要である」と力を込める。

空ノ間
「白蓮華堂」という名称の元にもなったハスの花のようにくびれたデザインは、1階部分に人や車が出入りするための空間を確保し、上階に禅定・演奏会・句会といったさまざまな文化的用途で使用できる客殿や主殿、庫裏を積み重ねた結果として生まれた。

如来堂
内部では壁面の傾斜に合わせて天井や壁の配置も斜めに傾け、音の反響を防ぐとともに、狭小ながらも広がりや開放感のある空間を演出している。また「都市の喧噪から切り離された瞑想の場」(竹山氏)を確保するため、小さな窓を配置し、都市の喧噪を見せずに採光を確保できるようにしている。

 〈施設概要〉
 ▽敷地面積=962㎡▽建築面積=528㎡▽規模=RC造地下1階地上6階建て延べ2294㎡▽意匠設計=設計組織アモルフ、構造設計=TIS&PARTNERS、設備設計=創設備、音響=永田音響設計▽施工=竹中工務店

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