2014/06/21

【復興まちづくり】住民自ら考え専門家はサポートに徹する 手島浩之氏

日本建築家協会東北支部宮城地域会(JIA宮城、鈴木弘二地域会長)は震災以降、宮城県石巻市の北上地域における復興支援に集中的に取り組んできた。90回以上に及ぶ勉強会やワークショップを開くなど、住民に寄り添いながら、専門家の集団として復興計画のブラッシュアップとその具現化に貢献している。その軌跡を報告書としてまとめた。JIA宮城の中で中心的な役割を担ってきた手島浩之氏(仙台市、都市建築設計集団/UAPP)に、これまでの活動を振り返ってもらった。

 北上地域とのつながりは、震災直後の2011年5月に県建築住宅センターが同市から受託した復興基本計画策定業務に、JIA宮城が参画したことが発端だ。以来、住民と行政の双方向の話し合いを基本に高台移転の支援活動を始め、その成果は市内で最も早い住民合意の形成に結び付いた。
 13年5月からは中心機能を集積させる『にっこり地区』の全体配置計画や、白浜地区での海水浴場など低平地利用のあり方検討、相川地区のコミュニティー施設の計画づくりなどを進めている。
 手島氏は「北上地域は、震災前から過疎化が進んでいた。地域のこと、自分たちの未来のことは住民が自ら考え、主体となって行動することが必要だ」とした上で、支援のあり方として「専門家はそのサポート役に徹するべき」と強調する。
 住民の意見を復興まちづくりにいかに反映させるか。その手法の1つとして、震災前から地域のあり方を話し合う場として設置されていた北上地域まちづくり委員会を活用した。「市長から委嘱を受けることで、任意団体とは一線を画した発言力を持つ」という一方、「市長の諮問機関だけに、開かれた会にはなり難かった」ため、住民が自由に議論する場として、地区別の分科会も設置。ここでの議論を委員会で決議し、市長に報告する形をとったという。今後は、復興の進み具合にあわせて、教育や観光などの分野別の分科会設置も視野に入れている。
 北上地域で最大の仮設住宅団地が並ぶ「にっこり地区」には、小学校や公共施設、災害公営住宅などの機能が集約される予定だ。JIA宮城では当初、地区北側で住宅の自力再建を目指す「にっこり北地区住民有志の会」を支援し、「地域のシンボルである北上川と追波湾への視線と軸線を生かす施設配置」を柱とした造成案をまとめた。

中心機能を集積させる「にっこり地区」の鳥瞰図
一方、災害公営住宅や公共施設を配置する予定だった南側で、「造成工事を困難にさせる硬い岩盤が見つかったため、地区全体の計画変更が迫られた」と振り返る。
 配置計画全体の見直しに当たっては、有志の会の意見を聞き取るとともに、災害公営住宅入居希望者への事前説明を行い、従前の基本的な考え方を踏襲した配置案を4パターン提示した。その中から、住民が統一意見として選んだのは、「自力再建と災害公営の両住宅をうまく混じり合わせることで、互いに見守っていくまち」という、扇形の団地の中に災害公営住宅をV字に配置する案だ。
 他の地区からも復興支援を求める声は強い。白浜地区では祭りや2日間限定の海水浴場の海開きにあわせて、ワークショップや模型などのイメージを展示しながら、意見の聴取を進めている。学校などの公共施設がなくなる相川地区の住民からは、衰退への強い危機感が示されているという。「この1年近くは、にっこり地区を集中して支援していた。相川や白浜はこれから本格化させていきたい」と力を込める。
 行政と住民の間に専門家が入ることで、順調に合意形成が進んでいるように見える北上地区のまちづくりにも、さまざまな課題がある。その1つが住宅や学校など行政側が所管する部署が異なる公共施設の建設方法だ。「住民間で良いまちをつくり上げようという意識が高まっている。縦割りになっている個別の事業をもう一度地域全体の事業としてとらえ直し、住民がこれまで検討してきた内容をしっかりと反映させる仕組みをつくりあげたい」と、引き続き地域に寄り添いながらまちづくり支援に取り組む構えだ。
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