2014/06/06

【Timeライン】虎ノ門ヒルズ、11日開業! 周辺再開発への起爆剤に【記者コメ付き】

「立体道路制度」の採用で建設が実現した
道路上空に建物を建設する画期的な手法「立体道路制度」により建設が実現した超高層タワー「虎ノ門ヒルズ」(東京都施行、環状第二号線新橋・虎ノ門地区第二種市街地再開発事業III街区再開発ビル)が11日に開業する。特定建築者として、創業の地での一大プロジェクトに臨んだ森ビル。その中で森ビル都市開発本部計画統括部施設計画部部長(虎ノ門ヒルズ開発準備室総合調整事業)の大森みどり氏は、事業計画や施設計画プロジェクトマネジメントを担当。「水滴(虎ノ門ヒルズ)がぽとんと落ちて、波紋が周りに広がっていくように、今後の周辺再開発への起爆剤になれば」と期待を寄せる。
【執筆者から:今まで六本木ヒルズなど多数のビッグプロジェクトに携わってきた大森氏。「1人で考えるより、多くの方とディスカッションしながら練り上げていくのがこの仕事の醍醐味」と語っていた姿が印象的でした】

◆モチーフは白と黒

大森部長が計画に携わったのは2009年9月。設計に当たっては、委託先の日本設計と検討を重ねた。白虎の虎のキーカラーである白と黒をデザインモチーフに、「外観は白く軽やかな形、内部はしっとり落ち着いた黒」にした。「国際ビジネスセンター」機能を具現化するため、虎ノ門エリアに必要な複合用途にこだわり、「今できるクオリティーを最大限に詰め込んだ」(大森部長)。

3層吹き抜けのアトリウム
その機能はさまざまだ。47-52階に、ハイアットが手掛けるパーソナルスタイルホテル「アンダーズ東京」を誘致したほか、37-46階は日本では珍しいホテルサービスを受けられるレジデンスとした。6-35階のオフィス部分のエントランスは「空港のビジネスラウンジ」「ギャラリー」をイメージし、専有部と共用部が融合し合うような環境を創出した。

車寄せ部分に飾られた油絵
こうした機能面だけではない。「森美術館を有するわれわれだからこそ、アートを組み込んだ」と胸を張る。車寄せ部分には「ウエルカムメッセージ」として長さ24mの油絵を飾った。「アートをもっと身近に感じてもらいたい」との思いがある。
 検討の過程では、「設計変更をして迷惑をかけたこともあった」と振り返る。その一つは、地上247mの建物の最上部。当初は機械設備スペースだったが、「せっかくの屋上をより有効活用できないか」との発想から、オープンエアのテラスを設けた。最上階の52階にルーフトップバー、テラス、チャペル、スタジオを整備した。

◆2児の母の目線で

大森みどり氏(森ビル都市開発本部計画統括部施設計画部部長)
「あらゆる場面でこだわりを大切にし、妥協を許さない」とは社内評。家庭に帰れば、2児の母でもある。子育てと仕事を両立しながら、これまで、六本木ヒルズなど多数のビッグプロジェクトに携わってきた。六本木ヒルズの開業当初には第2子が誕生。「子どもの着替え場所がなくて困ったよ」という休日に訪れた夫の率直な意見は、六本木ヒルズの数々の子育てサービスを実現するヒントにもなった。
 その第2子も小学校6年生に成長。「(わたしのように)子育てを経験した人だけでなく、さまざまな立場の人が知恵を出し合うからこそ、よいものができるのだと思う」と、数々のプロジェクトを振り返る。

◆ヒルズの個性引出す

 赤坂・六本木・虎ノ門・新橋エリアは、国際新都心として高いポテンシャルを有する。森ビルの辻慎吾社長は虎ノ門ヒルズ竣工に際して会見し、「周辺のナンバービルの再再開発(虎ノ門一丁目地区、虎ノ門・愛宕地区)を始め、六本木五丁目西地区、虎ノ門・麻布台地区など、今後10年間で10件程度(全体の区域面積の合計で約22ha、延べ床面積約220万㎡、グローバルレベルの新規住宅約3000戸を供給)の大規模プロジェクトを推進する」と明言した。 
 大森部長も「(虎ノ門エリアは)まだ“色”がついていないエリアだからこそ、チャレンジしたい。新しい東京の眺めをつくることができれば」と思いを込める。今後も、「それぞれのヒルズの個性を引き出す」をモットーに、こうした新たな開発の商品計画に全力を注ぐ。

◆建築概要

▽事業名称=環状第二号線新橋・虎ノ門地区第二種市街地再開発事業III街区
▽事業施行者=東京都
▽特定建築者=森ビル
▽規模=S一部SRC・RC造地下5階地上52階建て塔屋1層延べ24万4360㎡
▽建物高さ=地上247m
▽用途=事務所、住宅、ホテル、店舗、カンファレンス、駐車場
▽敷地面積=1万7069㎡
▽建築面積=9391㎡
▽設計=日本設計
▽施工=大林組
▽建設地=東京都港区虎ノ門1-23-1~4
▽着工=11年4月1日
▽竣工=14年5月29日
▽開業=14年6月11日
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