2012/12/29

【書を読み海を渡れ(最終回)】再び、海を渡るということ

日本へ帰ることに決めた。楽しみと同時に不安も大きい。それは日本をソトから見たいという思いだけで海を渡った12年前の気持ちと似ている。
 このコラムを連載していた2年間は英国で暮らす日本人の僕にとって大きな出来事があった。東日本大震災とロンドンオリンピック。
 連載開始直後に起きた震災。ディスプレーからのインターネット情報でしかわからない痛み。ふと見上げると、周りには普段と変わらぬ職場の風景。今までにない疎外感を味わった。しかし、世界中から集まった同僚たちの祖国でもそれぞれ問題を抱えている。隣国との 諍 (いさか)い、内戦、金融危機、国家破綻など。世界は常に回っている。世界の中で生きていくためには、そこに思いを巡らせることが必要なのだと身を持って感じた。
 オリンピックのある日常を体験できた。ロンドンが誘致活動をしていたころ、模型場で働き始めた僕は巨大なメーン会場模型を作成していた。その後、好景気にも後押しされ、準備期間と併走する形で英国での実務経験を積み、最後は世界遺産であるグリニッジ天文台公園の馬術競技場の現場監理にもかかわった。大会中、街で多くのユニオンジャックがはためく中、躍動する日本人選手たちに必死になって日の丸を振った。
 これらを毎月のコラムとしてまとめることで「世界の中の日本」「自分の中の日本」を深く考えるようになった。今、日本をナカから見たくなった。そして、ナカからソトへかかわるのが僕の役割ではないかとも思い始めた。
 この連載で取り上げた書籍は日本で既に読んでいて、英国での日常の気付きから再び開かれたものばかりだ。しかし、あらかじめ頭の中にあった先達からの教えと知識が、英国での行動の知恵へと昇華されなければ、これだけ長く生活できなかったと思う。実践としての日本論。
 連載を読んで、一人でも多くの人が本を手に取り、海外を目指すのなら、それは僕の喜びでもあります。海の向こうの世界は目の前のディスプレーの中の世界とは比較にならないほどに広い。書を読み、海を渡れ。ありがとうございました。
(感想などはこちらまで。www.twitter.com/yamazakikazuya
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月20日14面


Going back to home country, Japan

I have decided to go back to Japan. I am really nervous as well as look forward to. This is similar feeling to the one when I left Japan 12 years ago. In that time, I really wanted to see the world outside of Japan.
In past two years during this series of columns, I, Japanese lived in the UK, experienced the disaster and event, Tohokuearthquake and tsunami and London Olympic Games.
The huge earthquakes hit and triggered tsunami on my country when this series started. It was really painful experience that I had only information through the displays. In the office space, it is the same as usual. It was the isolated feeling which I had never had. But every colleague has their own issue on home countries, such asstruggles against neighbor countries, a civil war, financial crisis, bankruptcy etc. Our world is always spinning around. I believe it is essential skill for the people living in the global age to imagine others.
Luckily, I lived in the life with Olympics. My practical experience in the office started from making the model of OlympicPark master plan on bidding stage. It also developed through several British projects backed by good economy. During the games, among tons of the Union Jacks, I waved our national flag, Rising Sun, for Japanese athletes.
Through the disaster and event, I thought about my country in the world and inside of myself. Therefore, now, I would like to see my country from the inside and also started thinking it is my role to involve from the inside to the outside.
Almost every book selected for these columns are previously read in Japan and opened pages again by the inspiration of the U.K. I don't think I survived here so long if the information and lessons from
the books was transformed into the wisdom for the behaviour. It's practical thesis of Japan.
It would be really pleased if you would liketo pick up books and go overseas after reading my series of columns. The world beyond the sea is incomparably vast than the world in the display. Read books and cross seas. Thank you for your interest!

Related Posts:

  • 【奏楽堂】保ち・守り・使う! 歴史を紡ぐ日本最古の洋式音楽ホール保存活用工事  当時は愛知県の野外博物館明治村に移転する予定となっていたが、日本建築学会などから現地保存を訴える声が高まった。このため、台東区が東京芸大から校舎を譲り受け、約300m離れた上野公園内の一部の土地を東京都から借り、87年に移築した。音楽教育の記念碑的な存在であり、音響・遮音効果に対する技術的な工夫が見られる建物として、88年には国の重要文化財に指定された。写真は保存活用工事前の奏楽堂  移築以降は音楽ホールや公開展示施設として活用されて… Read More
  • 【建築文化保存協会】建築模型をテーマに連続講演会 17年3月まで10回開催  日本建築文化保存協会(三宅康之代表理事)は、建築模型をテーマとした連続講演会「建築家が創造する建築文化の未来-建築模型、その価値と可能性-」を2017年3月まで、合計10回にわたって開催する。毎回著名な建築家らをゲストスピーカーに招き、さまざまな角度から建築模型と建築文化の今後の可能性を展望する。初回は構造家の齋藤公男日大名誉教授・A-Forum代表が「空間 構造 物語」と題して講演。空間にエンジニアリングの醍醐味を入れ込む上で模型の果… Read More
  • 【建築】時代を変えるU-35! 若手建築家7組による斬新な展覧会 10/30まで@大阪市  NPO法人のアートアンドアーキテクトフェスタ(AAF)は30日まで、大阪市北区のうめきたシップホールで「U-35 35歳以下の若手建築家7組による建築の展覧会」を開催している。7組の建築家が参加し、斬新な作品を出展している。入場料は1000円(税込み)。  15日には、大阪市北区のナレッジシアターで記念シンポジウムを開いた。ゲスト建築家による審査も行い、酒井亮憲氏(studio[42])の「hanai」がゴールドメダルに選ばれた。 シン… Read More
  • 【清水建設】「パースで思いを伝える」 AIP最優秀賞の里悦子氏と渡邉美土里氏に聞く  米国の世界的な建築イラストレーション・コンペティション「AIP(アーキテクチャー・パースペクティブ)」で、清水建設設計本部プレゼーテンションセンターの里悦子氏が最優秀賞を受賞した。昨年の第30回大会でも同センターの渡邉美土里氏が最優秀賞を受賞しており、清水建設は2年連続で最優秀賞を獲得した。画像は里悦子氏の『Tokyo Alley』 里 悦子氏 今回、最優秀賞を受賞した里氏の『Tokyo Alley』は東京の路地から空を見上げた… Read More
  • 【大高正人】仕事と可能性に迫る展覧会「建築と社会を結ぶ 大高正人の方法」 10/26から  文化庁の国立近現代建築資料館(東京都文京区)は、建築家・大高正人の仕事の全体像を紹介し、求めた建築の可能性に迫る展覧会「建築と社会を結ぶ 大高正人の方法」を26日から開く。会期は2017年2月5日まで。期間中、広島市と福島県三春町、東京都港区でシンポジウムも3回行う。  大高正人は、戦時下の1944年に東京帝国大学建築学科に入学し、外来講師だった前川國男に師事。卒業と同時に正式所員となり、戦後派スタッフの中心としてプレモス72型や晴海高… Read More

0 コメント :

コメントを投稿