2012/12/02

【素材NOW】シャーベットで水道管内を洗浄! アイスピグ


スラリー状の特殊なアイスシャーベットの力で、水道や下水道の管内に溜まった赤さびや不純物を取り除く「アイスピグ」洗浄。考案した英国ブリストル大学のジョゼッペ・クオリーニ教授は「粘性の高い水がもたらす効果を知ってほしい」と呼び掛ける。欧米では定着しているが、日本ではトライアル工事が始まったばかり。上下水道に限らず、工場やマンションなどの建物内配管洗浄にも期待されている。

 この洗浄は、5%濃度の塩水を凍らせたアイスシャーベットを流し込み、管内の赤さびや不純物を運び出す。管路口径の変化や曲がり部分など複雑な形状でもくまなく洗浄できる。特殊な製氷機で作ったシャーベットは含氷率が9割と高いために溶けにくく、洗浄に使用する水の量も節約できる。材料には塩水と無害な添加剤を使っているため、健康や環境にもやさしい。
 日本では、スペイン水事業会社のアグバール社から専用実施権を取得した東亜グラウト工業が普及に向けた活動を始めている。ことし9月には管清工業(東京都世田谷区)、日本ノーディックテクノロジー(東京都千代田区)、藤野興業(大阪府富田林市)、山越(名古屋市)の4社に加え、地元業者5社で構成する神奈川県アイスピグ工法協会(事務局・三宝物産内)と連携し、アイスピグ研究会を発足した。
 水道管の総延長は56万㎞。下水道の管路も合わせれば、100万㎞を超える。施設を含む国内の水道関連資産はざっと約40兆円に達すると言われ、そのうち管路は7割を占めている。国の水道ビジョンづくりにも参加している小泉明首都大学東京名誉教授は「広範囲に及ぶ管路の耐震化とともに、維持管理のあり方が問われている」と強調する。
 既に大阪府や岐阜県、愛知県ではアイスピグ洗浄のトライアル工事が実施されている。研究会では14時間で5tの特殊シャーベットを製造できる設備を整えており、専用デリバリーユニットで現場に搬送できる体制も確立した。研究会の会長を務める大岡伸吉東亜グラウト工業代表取締役会長は「2012年度内に各地でトライアルを行い、13年度から積極的な営業展開に乗り出す」と力強く語る。
 ターゲットに置くのは上下水道の管路洗浄需要だが、将来的には建築物内の配管洗浄ニーズも取り込む狙いがある。「膨大な資産ストックの維持管理の一翼を担っていきたい」(大岡会長)。洗浄範囲は径1mmの小口径から最大600mmの大口径まで幅広い。「見事なまでにシンプルで、環境にもやさしい点が受け入れられ、欧米では既に何百件もの工事に採用され、信頼ある工法として認知されている」とはクオリーニ教授。日本での普及にも自信をのぞかせる。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年11月28日 12面

Related Posts:

  • 営業速報! 「宇宙戦艦ヤマト 建造準備および発進準備工事」を入手。前田建設ファンタジー営業部  前田建設ファンタジー営業部は、松竹が7日からイベント上映している新作アニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』に関連して、ヤマトの建造準備と発進準備工事の実現検討業務を受託した。アニメの中に前田建設が登場するわけではないが、発注者である「国連宇宙軍」が2199年、性能発注方式で前田建設に特命で依頼したという架空のストーリーに沿って検討を進める。検討結果は、ホームページで6月まで数回にわたって公開していく予定だ。  ファンタジー営業部と宇宙戦艦ヤマト2… Read More
  • 東鉄工業が「投資家向け現場見学会」 常磐快速線利根川橋りょう改良工事  東鉄工業は機関投資家など向けに現場見学会を開いた。IR(投資家向け広報)の一環として実施し、アナリストやメディアなど20人超が参加した。同社が機関投資家向けに現場見学会を開くのは2010年8月以来で2回目となる。土木工事の目玉現場である「常磐快速線 利根川橋りょう改良工事」(発注=東日本旅客鉄道、施工=東鉄工業・鉄建JV)を見学した。工事の規模とともに、営業線に近接する工事での安全の取り組みなどを紹介、高い技術力をアピールした。  見学会… Read More
  • 南極・昭和基地に15人目の技術者を派遣 飛島建設 南極での型枠工事  飛島建設は、第53次日本南極地域観測隊に建築技術者を派遣した。同社は国立極地研究所から要請を受け、1994年から毎年、観測隊の設営部門(建築・土木)に技術者を派遣している。同社にとって15人目の派遣となる今回は、分厚い海氷に阻まれて観測船「しらせ」が接岸できないトラブルにも見舞われたが、設営計画を変更して無事に任務を完了した。 ペンギンも現れる  今回の派遣技術者は、首都圏建築支店建築事業部リニューアル作業所の小久… Read More
  • 長さ10㍍の巨大ジオラマを展示 NEXCO中日本が川崎にコミュニケーション・プラザ  中日本高速道路会社は16日、高速道路の建設、管理技術などを一般に紹介する「コミュニケーション・プラザ」を川崎市と静岡県富士市に開設した。  川崎市宮前区の「コミュニケーション・プラザ川崎」では、長さ10mの高速道路の大型ジオラマや最新の点検、清掃技術などを展示している。また、施設内には道路管制センターを設置。高速道路の保守・管理業務の様子を見ることができる。 このほか、希望者は社員研修で使用される料金シミュレーション室を見学することも可能。… Read More
  • 佐藤工業が介護事業に参入! 第1号「マナの家増泉」が開所 「マナの家増泉」  佐藤工業が、事業多角化の一環として参入を計画している介護事業が本格始動する。金沢市内の設計事務所と共同出資した会社が運営する、初めての介護施設が21日、同市内でオープンした。運営会社では今後、全国展開を視野に年間2-4棟を目標に施設設置を加速する。 同社は4月1日付で、介護事業やPPP・PFI事業を検討するため、本社多角化事業統括部に「PPP・介護事業ユニット」を設置した。今回オープンした介護施設「マナの家増泉」は、事… Read More

0 コメント :

コメントを投稿