2012/12/23

【BIM】Bentley Be Inspired in アムステルダム(3)

テイラー・ウッドローらの3Dモデル

◇インドの「グリーンシティ構想」

 かつて見たこともないような近代的で美しい都市。SF映画に出てきそうな近未来都市でありながら、緑も豊富にある。ビー・インスパイアードのプレゼンテーション会場で、そんな都市の姿が3次元のウォークスルー・ムービーで上映された。インドのバンガロールを舞台とした「グリーンシティ構想」だ。最先端のエコ技術をふんだんに盛り込んだ環境配慮型都市で、国際的なオフィスビルが立ち並ぶ。敷地面積は16km2mにも及び12の村を含む。いわゆる「面的開発」という言葉ではカバーできないほどのダイナミズムを観る人に訴える。
 ビー・インスパイアードは、各国から集まったベントレー・システムズのユーザーたちによるオリンピックとも言える。ユーザーがどのようなプレゼンを行ったか、かいつまんで紹介したい。
 このインドのグリーンシティ構想は、無秩序な都市開発を防ぐためにバンガロール開発公社が計画している。インフラ需要が旺盛なインドらしいプロジェクトでもある。土地開発部門の会場でプレゼンしたのは、コンサルタント業務を受託しているタンドン・アーバン・ソリューションズ。「このプロジェクトは、バンガロールにとっての大きなチャレンジだ」と意気込む。
 同社は土地開発、道路、上下水道など各分野でベントレーのソフトを駆使し、計画期間を大幅に短縮してコスト削減につなげた。都市を丸ごと開発するというあまりに壮大な計画ゆえ、会場からは「実際に工事が始まるのはいつごろか?」など、プロジェクトの現実味に疑問を投げかける声さえあがった。

◇高難易度の都市土木 3Dモデルで克服

 一方、英国の大手建設会社であるテイラー・ウッドローとBAMナトールのJVは、ロンドン地下鉄・ビクトリア駅の改修に伴う地盤改良工事についてプレゼンした。ロンドン地下鉄は日本の地下鉄と同様、激しいラッシュが悩みの種だ。また地下鉄には歴史があり、つまり施設の老朽化が進んでいる点でも日本と似た構図といえる。改修工事には駅の増築にあわせて歩行者通路の新設、切符売り場の拡大も含まれる。
 同社は、1960年代に建設された既存駅と増築部とを接続するための地盤改良を実施した。ジェットグラウト工法による円柱状改良体を地中に構築したが、「駅を通常どおりに使いながらの施工で、振動や騒音に配慮しなければならない。さらに地中には埋設物が輻輳している」(テイラー・ウッドロー)と、施工の難易度は高い。
 日本で行われても不思議はない典型的な都市土木工事だが、同JVは初期設計段階からベントレーの「マイクロステーション」を導入して3次元モデルを構築。逐次、各種データをモデルにフィードバックさせながら、色分けによるビジュアル化によって効率的でミスのない施工を可能にした。このプレゼンは建設部門で最優秀賞を受賞している。
 今後、日本でも土木分野でのBIM導入がさらに加速すると見られるが、諸外国の先進的な事例から学ぶべき点は多い。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月19日12面

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