2012/12/08

【建築】fuse-atelierの「House in ABIKO」 壁・屋根の角度で分節

上部構造をキャンチ形式にして杭面積を節約
千葉県我孫子市に立つ戸建住宅『House in ABIKO』。建築主の30代の夫婦から示された条件は、予算、面積と、趣味のデザイン家具が映えるデザイン性あふれるコンクリート空間の3つだった。その建設地の地盤は軟弱で長さ15mに及ぶ杭を打つ必要があった。普通に建てれば杭工事で予算を消化してしまう。
 fuse-atelier(千葉市美浜区)の布施茂代表は、杭の本数と径が合理的にリーズナブルとなるよう、家の接地面積を小さくし、上部構造にキャンチ形式を採用することにした。その結果、床面積は1階が約25㎡、2階が約50㎡となった。
 建築主から提示されたデザイン家具の配置も考慮し、下が小さく上が大きい構造とデザインのバランスを取りつつ設計した。その結果、異なる大きさの壁や屋根のスラブを立体的に傾斜させた連続面が特徴的な形態となった。
 小部屋や浴室などの水回りの空間が突き出しているが、応力伝達を合理化し、上、横、下から全面でバランスを持たせた。
 屋内も、外観そのままの角度でスラブがむき出しになっている。部屋と部屋を区切る壁はないが、多面構成の角度によって空間は連続しつつも分節されている。
 トップライトなどから差し込む自然光もさまざまな角度を持つ壁や屋根に反射し、多様なシークエンスを生み出している。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月5日5面

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