2012/12/09

【現場最前線】都市土木を結集! 外環千葉区間・大和田工事

長大な仮橋を構築して工事が進む
東日本高速道路が建設を進めている東京外環自動車道千葉県区間。京葉道路とのジャンクション(JCT)と、外環に新設される市川南ICなどを建設している「大和田工事」は、シールド工法によるランプシールド構築、江戸川幹線下水道の付け替えなど多様な工種が入り組む都市土木技術が満載の現場だ。発注者である千葉工事事務所の本宮剛志工事長、工事を担当する清水建設・前田建設工業・東洋建設JVの武智知行所長を取材した。

◇多工種を同時施工

 大和田工事は千葉県市川市の新田・平田・大和田・稲荷木・鬼高地区で外環自動車道の函体を建設する。ここには掘割式で構築する外環道本線部のほか、京葉JCTのランプ、外径13mの泥土圧式シールドトンネル、江戸川幹線下水道の付け替え、京葉道路を上空で跨ぐランプウエーの下部工など、都市土木で使われる工法が一つの工区に詰まっている。武智所長は「これこそ都市土木だ」と胸を張る。
 下水道付け替えは、地上から「透かし掘り」という手法で下水管の下をくりぬき、さらに「スーパープラグ」という装置で下水を流しながら新しいルートに切り替える複雑な工事だ。
 鬼高で上下線に整備されていたパーキングエリアは、上りのみに集約するので、下り線からアクセスするためのランプを構築する。工事中は、シールドトンネルの発進基地や京葉道路と住宅地に挟まれた狭小な作業ヤードの中で工事を進めていく。
◇シールドトンネル
 Hランプとしてつくられるシールドトンネルは、外径13mもの大きさがありながら、土被りは最小1.8mという場所がある。通常トンネルの土被りは最低でも1D(トンネルの直径と同じ)が必要とされるが、このケースではわずか0・14Dとなる。
 水が多いこの地域では、トンネルに巨大な浮力がかかるため、浮き上がり対策が求められる。シールド工事は「いま設計が終わり、施工計画に取りかかっている」(武智所長)ところで、2014年度に3カ月かけて長さ350mのトンネルを構築する。

◇子どもは将来の外環ユーザー

 「子供は将来の外環ユーザー」。本宮工事長は、近隣との関係についてこう話す。この現場の周囲には、小学校や幼稚園などがあり、子供を危険から守ったり、建設現場の姿を教えたりという取り組みにも力を入れる。
 隣接する幼稚園の送迎バス駐車場を現場内に設け、見通しが悪い場所にはカーブミラーを設置、仮囲いには小学生が描いた絵を飾った「ミニギャラリー」を置くなど、きめの細かい対応が光る。
 工事を教材として使ってもらう職場体験学習も好評だ。「小学生に新規入場者教育やコンクリートの練り混ぜもしてもらった」(武智所長)という。
◇現場の運営
 現在、現場のJV職員は約70人、作業員は約300人。「最盛期には1000人になる」(武智所長)という。現場は4つのブロックに分割して管理している。近隣に3000世帯の町会・自治会が5つもあるこの現場では、ガードマンのあいさつも大切だ。「何事も先回りして対策していくことが第一」(本宮工事長)と、これから4年以上続く工期と向かい合っていく。
▽工事名=東京外環自動車道大和田工事▽工期=2011年6月1日-16年1月5日▽施工者=清水建設・前田建設工業・東洋建設JV
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月5日12面

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