2012/12/22

【げんば最前線】東北大学国際集積エレクトロニクス研究開発センター

建設中の研究開発センター
自動車産業とともに、東北地方の復興をけん引する産業として期待される半導体産業。その次世代半導体と応用製品となる集積エレクトロニクス技術を産学連携で研究開発する拠点施設の建設が、仙台市内の東北大学青葉山新キャンパスで進んでいる。大成建設が設計・施工を手掛ける同大国際集積エレクトロニクス研究開発センターだ。建設資材や労働者などの不足が深刻化する中、さまざまな工夫と知恵をこらし、復興の一翼を担う同センターの施工に取り組んでいる。


◇世界的技術開発拠点へ

 同センターは、集積エレクトロニクスの世界的技術開発拠点の形成を目指している東北大学の趣旨に賛同した、半導体製造装置最大手の東京エレクトロンが整備・寄付する。2013年4月の完成を目指す。
 規模はS造3階建て延べ5953㎡で、約1900㎡のクリーンルームを設ける。国内外から共同研究参加者を募集し、次世代半導体メモリーとして有力視される磁気メモリ(STT-MRAM)の設計・製造技術、さらにその応用となる組み込み・電子機器などの研究開発を幅広く展開する予定だ。
 工事は9月からスタートし、11月13日には上棟式が行われた。復旧・復興工事が進む被災地での施工とあって「生コンクリートを始めとする建設資材や型枠大工、鉄筋工ら技能者の確保に苦労した」と語るのは、佐々木将作業所長(大成建設)。


クリーンルームの建設現場
◇職人不足が課題

 特に確保が難しかったのが型枠大工だ。通常は専門工事業1社で足りるが、今回の工事では4社による混成チームを編成。それでも不足のため、型枠の解体やパイプの締め付けなどの作業は型枠大工の指導のもと、普通作業員と共同で作業に当たった。
 佐々木所長は「大工さんだけで作業を進めたら工程に遅れが生じることは分かっていたので、大工さんでなくてもできる作業がないかと考えた。生コン不足についても、最初から1日200m3しか入手できないことを前提とした計画を立てることで、予定どおりに作業を進めることができた」と話す。
 工事は現在、メーンのクリーンルームの造り込みに入っている。クラス1000(1立方フィート中に0.5ミクロン以上の微粒子が1000個以下)の性能が求められるため、事前に職長クラスや同社社員らでつくる「クリーンアップ委員会」を設けてホコリの侵入防止に努めている。
 また、地震対策として杭頭接合部を半剛接合とすることで杭基礎の耐震性能を高める「FTパイル工法」や「シェイプアップブレース(大成式座屈拘束ブレース)」といった同社の固有技術を採用している。
 「ボーリング調査の結果、地下6-7mに強力な支持層があることは分かっていたが、復興をけん引する施設が地震で壊れたりしないよう、念には念を入れた。安全に十分配慮しながら高品質の建物を引き渡したい」と災害に強い建物づくりへ最善を尽くしている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月18日6面

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