2013/01/05

【BIM】Bentley Be Inspired in アムステルダム(最終回)

ベントレー社のグレッグCEO
BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が稀少生物を救う--。各種の建設プロジェクトでBIMが貢献するのは、設計や施工の段階だけではない。ベントレー・システムズのユーザーイベント「ビー・インスパイアード」では、さまざまなソフトを駆使して計画段階から環境負荷抑制に取り組んだ事例も紹介された。

◇環境配慮にBIM活用

 鉄道分野のプレゼンテーション会場では、米国のシカゴとセントルイスを結ぶ高速鉄道計画について報告があった。この鉄道は、希少な動植物が多いプレーリー(温帯草原地帯)を通過するため、事前の慎重な周辺環境調査が求められる。プレゼンしたクイッグ・エンジニアリング社は、調査に『マイクロステーション』や『ジオパック』などのソフトを使い、「通常の半分の期間で調査を終えた」という。
 一方、国土開発分野のプレゼン会場では、米国ネバダ州の風力発電計画が報告された。66台のタービンで計152メガワットを発電する大規模施設だが、実はこの計画地にもピグミーウサギなどの希少生物が生息している。プレゼンしたモーテンソン建設は、「ネバダでは初の風力発電。いかに環境に配慮しながら土地の能力を引き出すかが課題だった」と話す。
 同社は、タービン部品や設備レイアウトを最適化するため、川上段階から複数のベントレー製品を組み合わせてモデリングを実施。「それぞれのタービン敷地を約40%縮小できた。コスト削減額は不明だが、周辺環境へのインパクト軽減はコストメリットを上回るだろう」(同社)。このプレゼンは、国土開発分野で最優秀賞を受賞した。

◇ベンダーとユーザーを「コネクト」

 ベントレー・システムズが2012年に入って打ち出した新機軸が「ベントレー・コネクト」だ。コネクトとはさまざまな関係者同士をつなぐ、つまりクラウドサーバーなどの活用による関係者間の情報共有や双方向コミュニケーションを加速させるためのコンセプトでもある。
 グレッグ・ベントレーCEOは、「すべてのベントレーユーザーに対するサービスで、いわばホームページのようなものだ。従来から構想自体はあったが、それを今回明確に打ち出した」と話す。単に情報共有だけでなく、ソフトの使い方などをオンライン経由で学んだり、アップデートなどをリアルタイムにできるメリットも大きい。
 今回のビー・インスパイアードでも、サブコンや取引業者とのデータ共有によって業務効率を大幅に改善した“サプライチェーン改革"の事例も複数報告された。

◇タブレットと連携

 さらに、タブレット端末の台頭によって機動性が高まった。建設現場にタブレット端末を持ち込んでBIMの画面と実際の現場を見比べて施工を進める「バーチャルと現実の融合」が加速している。当然、ベントレーもタブレット端末への対応を強化している。ビー・インスパイアードの会場では、タブレット端末を使ったさまざまなデモンストレーションが行われたほか、実際に手にとって操作できる体験ブースも設けられた。
 ソフトの購入価格を上回るメリットを追求するしたたかなユーザーに対し、ベンダーはニーズの把握に躍起になる。ベンダーがユーザーを育て、ユーザーがベンダーを育てる。ビー・インスパイアードというイベントから、両者のそんな構図が見えた。それはベントレーとそのユーザーとを“コネクト"するためのイベントでもある。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2012年12月26日16面

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