2013/01/31

【復興版】「想定外」を想定する 津波の浮力使った新避難タワー

政府の地震予測などに基づき、太平洋沿岸の地方自治体で津波避難ビルの建設構想が相次ぐ中、新たなアイデアを盛り込んだ避難施設を提案する動きが出てきた。避難ビルに浮力を持たせた浮島を仕込んでおき、万が一避難ビルの高さを超える巨大津波が発生した場合、浮島が中心部のポールに沿って浮上して人命を救うという発想だ。「想定外」を想定した対策と言える。
 発案したのは、健康食品輸入販売業などを手掛けるハッピーライン(千葉県松戸市)で役員を務める猿谷進氏。「私は建設技術者ではなく、まったくの素人。しかし、自分にできることはないかと考えた」という。このアイデアに関心を持つ専門家を募り、実現に向けた研究を進めてもらいたい考えだ。
 全国で計画中の津波避難ビルは、地域や地形などに応じた津波を想定して建設されるものの、「果たしてその高さで十分なのか」といった不安はなかなか払しょくできない。猿谷氏のアイデアは、実際に発生した津波の高さに応じて避難場所の高さを柔軟に変えることができるのが最大の特徴だ。津波で押し寄せる海水の浮力を逆手に取った発想でもある。
 猿谷氏は、「避難浮島は絶対に水没することがあってはならない。このため、浮島の内部に浮桟橋やメガフロートのように発泡体を注入することで、コストダウンと沈没を防げるのではないか」と考えた。既に実用新案と特許を申請している。
 人工的な丘を構築して中心部に浮島を仕込む方法や、高いデッキを構築して浮島を設置する方法などを想定している。万が一、丘やデッキを超える高さの津波が来た場合、浮力を受けた浮島が中心部のポールに沿って上昇する。上昇中に浮島が回転しないよう工夫している。
 さらに、ポールを超える高さの巨大津波が押し寄せて来た場合、ポール最上部のキャップが外れて浮島が単独で浮遊できる仕組みも盛り込んだ。
 猿谷氏は、「東海・東南海・南海の3連動地震が近い将来、発生すると言われているため、できるだけ早く取り組んでもらえる企業にお願いしたい。設計や建設の専門家に、構造的に丈夫な施設が安価に整備できるのかどうか研究してほしい」と、今後の展開を思い描いている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年1月30日 12面

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