2013/01/26

【素材】塩ビ製鳥居が口コミで話題に 震災後に注文急増

多賀城市の柏木神社
管工事業を営む中島ビニール加工(茨城県日立市)に転機が訪れたのは1994年。地元の神社で木製鳥居が劣化していることを聞き、試しに塩ビ管で鳥居をつくり奉納した。それがきっかけとなり、噂は口コミで全国の神社に広まった。
 東日本大震災では、被災地を中心に多くの鳥居が損壊・倒壊したほか、津波で流されてしまったケースもあった。塩ビ工業・環境協会(東京都中央区)は「復旧では河川堤防や国道などの社会基盤が優先されてきたが、ここに来てようやく神社の鳥居などにも目が向けられるようになった」と説明する。

◇軽く、劣化せず耐久性に特化

 材質は、硬質塩化ビニールを使う。木製に比べ耐久性にすぐれ、鉄製のように錆びることもない。重量は木や鉄よりも軽いため、地震時に倒壊する危険性も低い。材質面で劣化しにくいため、メンテナンス性も高い点が特徴だ。
 設置場所は、神社の敷地内だけでなく、軽量の特性を生かし、山の頂上やビルの屋上などでも施工が可能。海水や潮風にさらされても風化しにくいほか、燃えにくいメリットもある。汚れた場合でも水拭きである程度の汚れを落とすことができる。
 年間100基ほどを納品している中島ビニール加工では、震災後に東北地区を中心に関東や中部地区からの注文が急増している状況だ。最近は電話やメールで1日に3-5件の問い合わせがある。注文の依頼から作製までは50日程度かかり、現在はフル操業で対応している。

◇価格は10万円から

 津波の被害にあった宮城県気仙沼市内では、2012年11月に気仙沼賀茂神社で塩ビ鳥居が設置された。最近では被災地での設置事例が目立っている。多賀城市内の柏木神社もその一つだ。依頼を受けた場合、既存鳥居の型式や笠木の太さ、柱の間口などをもとに、図面を作製する。設置はキット式の組み立てになるため、重機などは使わなくても依頼主自らが組み立てられる設計にしているという。
 運搬費や設置工事費などを除く価格は、笠木の直径によって異なるが、土台パイプや神社名も含め10万円台から。大型の鳥居では200万円近いケースもある。カラーは朱色、木色、石色の3種類がベースだが、表面は塗装仕上げであるためにオプションカラーにも対応できる。
 塩ビ樹脂の内需は年間100万t超。全体の半数は建設資材として使われており、公共事業を始め建設市場の動向が生産量に大きく左右される側面もある。塩ビ鳥居は、安価に安全性を高めることができるアイデアの一つとして、塩ビ業界でも注目されている。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)2013年1月23日12面

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