中央合同庁舎第8号館 |
吉野裕宏整備課施設評価室長は「竣工後にどのようなデータを渡すべきか、現時点でははっきりと判断できていないため、試行案件の取り組みだけではなく、民間プロジェクトの導入事例も含め、有効なデータ連携の枠組みを探りたい」と考えている。
◇維持管理への連携探る
前橋地方合同庁舎では、設計者の安井建築設計事務所がFM(ファシリティ・マネジメント)へのデータ連携に向けた独自提案を実践しようと準備している。同社があえて基本設計から設備の3次元モデルを作成しているのも、建物管理に設備の関連情報が不可欠であるためだ。村松弘治執行役員東京事務所副所長設計部長は「実は、既にFMへのデータ連携を意識した設計情報の入力を行っている」と強調する。
民間プロジェクトでは積極的にBIMを取り入れている同社だが、基本設計時に多くの属性情報を入れ込んでも、結局活用されないままの情報が存在している状況を解消したい思いがあった。維持管理まで想定し、情報活用の整理ができれば、設計時にFMの詳細なシミュレーションも実現する。現在は、建物外装のLCC(ライフサイクルコスト)を評価できるプログラムの開発に取り組んでおり、試行業務に導入する考えだ。
◇引き渡し時の扱いは未定
国交省が試行案件の参考にしようと考えているプロジェクトには、現在計画中の2件のPFI事業がある。中央合同庁舎第8号館の清水建設グループと、気象庁虎ノ門庁舎港区立教育センターの大成建設グループは、いずれも維持管理段階へのBIM活用を事業提案として盛り込んでいた。
官庁営繕部では、両事業とも自主的な提案であるため、建物完成までに具体的なBIMデータ活用プランを把握するものの、具体の導入効果までは検証しない。ただ、完成時には「従来の図面納品とともに、BIMデータの提供も受ける可能性はある」(高橋武男整備課特別整備室企画専門官)と考えており、工事完了後までに結論を出す方針だ。
試行プロジェクトでは、竣工後に引き渡すBIMデータの扱いについて、今後の検討課題に位置付けられている。合同庁舎などの建物管理は国交省でなく、あくまでも入居官署が行うため、データを誰が管理するかという組織体制のあり方まで決める必要がある。管理方針も施設ごとに異なるだけに、案件に応じた必要情報の事前把握も欠かせない。
乗り越えるべき課題は他にもある。現在は建物完成後、入居官署に設計図面を渡しているが、通常の2次元設計データについては国交省側で納品物として保管している。将来的に維持管理段階にBIMデータを活用するには、そうした部分の扱いまで見直す必要が出てくる。企画から設計、施工、維持管理に至るまでデータ連携の厳密なルール設定が強く求められている。
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