2012/02/17

BIMデータ15分の1に/ラティス・テクノロジーのiXVL View


ラティス・テクノロジー(東京都千代田区)が2011年10月にリリースしたスマートモバイル対応のビューワソフト『iXVL View』は、独自開発のファイル形式「XVL」に変換された3次元モデルを自由に閲覧できる。鳥谷浩志社長は「製造業で7割近くの普及率を誇るXVL形式の利点を、ぜひ建設業界にも知ってほしい」と期待を込める。
製造業では、大手企業を中心に2000年ごろから3次元設計を導入する動きが高まったものの、データ容量の増大に対応せざるを得ない課題も抱えていた。企画から設計、製造まで一気通貫の生産サイクルに3次元データを循環させるには共通のファイル形式が求められ、さらにデータの軽量化も急務だった。

XVLは、3次元モデルにおける曲面部分のデータ構成精度を調整することで、最大100分の1ものデータ軽量化を実現する。同社は閲覧ソフトを無償提供するとともに、並行してXVLの変換や編集を行う有償ソフトの販売も進めており、XVLは製造業で使われるメカニカル系CADでは欠かせないファイル形式となっている。
建設業界では、建築分野を中心に3次元モデルデータの活用が活発化し、ゼネコンや大手設計事務所の中にはBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を経営方針として推進する動きに発展している。標準ファイルとして浸透しつつあるのは IFC形式。鳥谷社長は「機械系部品と違い、建築物は曲面部分が少なく、 XVL変換による大幅な軽量化は見込めないが、 それでも容量15メガのIFCデータであれば1メガまで15分の1に軽量化できる」と説明する。

戸建て住宅分野では、関連メーカーが自社製品の3次元モデル提供を加速しており、そのデータ形式の一つとしてXVLが採用されている。住宅系は工業化が主体となり、ビルなどの一般建築物に比べて3次元データの情報共有がしやすい。ハウスメーカーでは、キッチンやトイレ、家具など具体の商品を3次元化したモデルを使い、よりリアルに住まいの空間をプレゼンする場面が一般化しつつある。
建築分野でも、BIMソフト『GLOOBE(グローブ)』を提供する福井コンピュータがIFC形式に加え、XVLデータへの出力機能を盛り込んでいる。鳥谷社長は「製造業も建設業も、CADの世界では海外メーカーが幅を利かせている。(福井コンピュータとは)国内のソフトベンダーとして互いに連携し合い、日本の文化、日本のものづくりを支えていきたい」と強調する。
iXVLは、米アップル社のiPad、iPhoneなどに対応している。福井コンピュータの運営する建材データベース「バーチャルハウス・ドットネット」内のXVLデータを3次元表示できる体制も整えた。「維持管理を見据えて長期保存に対応する意味でも、超軽量化されたXVLデータは利用価値があるはずだ」(鳥谷社長)。

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