2014/07/20

【BIM】施工で使いやすいモデルをいかに設計で作成するか 五洋が目指すBIM

「自分たちの仕組みに合ったBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の構築に力を注ぐ」と、五洋建設の中村治男BIM推進室長は焦点を絞り込む。国土交通省のBIM試行プロジェクトである前橋地方合同庁舎の工事受注を機に、社を挙げて取り組むことを決め、BIMコンサルタント会社のペーパレススタジオジャパン(福岡市、PLSJ)とも業務提携を結び、推進体制を整えた。五洋建設の目指すBIMを追った。図は前橋合庁のBIMモデル。


 「試行プロジェクトという絶好の機会を得ることができた。当社にとっては初めてのBIMだが、宿題以上の取り組みをしていきたい」(中村室長)。試行の条件では基準階の5階部分に限定し、3次元モデルから施工図や総合図の出力が求められていたが、あえて地下1階から地上11階までのすべてを対象範囲にすることを決めた。
 電気設備のユアテックや機械設備の日立プラントテクノロジーからも3次元モデルデータの提供を求めるため、当初のBIM作業は実際の工事進捗に比べてやや遅れていたものの、徐々に足並みはそろってきた。現場にはPLSJのBIMオペレーター1人が常駐しており、現場担当者の指示を受けながらモデル作成を進めている。

推進室の社内報告会
ことし1月に発足した推進室は設計、施工、見積もりなどの各部門からの兼任者も含めると、10人を超える。前橋地方合同庁舎の工事に着手した当時は後ろ向きの意見もあったが、BIMに対する社内の見方は徐々に変化している。推進室が開催している社内報告会では回を追うごとに導入への機運が高まり、不安を感じていた設計や現場の担当者レベルでも意識変化が現れ始めているという。
 「ゼネコンでは設計施工の一貫プロジェクトこそ、BIMの効果を最大限に生かせる。次にステップアップする意味でも、社として試行プロジェクトに取り組むことが欠かせない」(同)。物流施設、倉庫、マンションは受注の割合も多い上、設計仕様がある程度決まっていることから「BIMの題材としても扱いやすい」と考えている。2014年度は2件ほどを試行対象に設定する予定だ。

前橋合庁では専門工事業者とのデータ連携も実現
前橋地方合同庁舎のBIM現場では、モデル精度など実務的な悩みも見えてきた。「施工図に表現するものは3次元化すべきであるが、あまり細かく描いても手間がかかるだけ。自分たちの仕組みに見合ったレベルを選ぶことが肝心だ」。近年は民間工事でもBIMの提出が条件の1つとして設定されるケースがあるだけに、受注戦略上も欠かせない選択肢になっている。
 社内への普及に乗り出す中で「BIMオペレーターの存在が欠かせない」と、中村室長は強く感じている。PLSJとは今後3年間にわたるBIM推進の取り組みについて、業務提携を結んだ。前橋地方合同庁舎では、PLSJが鉄骨データや鉄骨階段データを建築施工モデルに連携させるシステム構築の下支え役となったように「コンサルティングだけでなく、オペレーターも含めて支援してもらう関係性が強み」になっている。特にシステム調整の部分では効果を発揮している。

中村室長
「BIMを自らの業務にどう活用すればいいのか。それは各部共通の悩みであり、組織としてまだ具体的にイメージできていない部分はある。施工段階で使いやすいモデルを設計段階でいかに作成できるかが重要になってくることは明らか。そのためにモデリングルールの検討もスタートした。導入案件を増やしながら、より使いやすい枠組みを整えていきたい」
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