2014/07/15

【熱中症】スポーツ飲料/経口補水液「飲み分け」て予防 味の素が提唱

熱中症による年間死亡者数は毎年20人前後で、その半数を建設業が占めている。熱中症を防ぐ重要なポイントは、暑さを避けることと、水分や塩分を適切に補給することの2点。このうち水分・塩分補給に対し食品メーカーである「味の素」は、発汗量など、状況にあわせてスポーツ飲料や経口補水液を飲み分けることが重要だと指摘する。スポーツ飲料は塩分が少なく、糖分が多い。つまり、糖分でエネルギーを補給するというイメージであるのに対し、経口補水液はスポーツ飲料に比べて塩分が濃い。組成も体液に近く、しかも体液よりも浸透圧が低いため水分の吸収が早く、脱水症状から早く抜け出せるのが特徴だ。

 熱中症の主な原因は、発汗(体液の喪失)による脱水症状で、体内の水分や塩分のバランスが崩れ、体内の調整機能が効かなくなったことによって発症する障害をいう。脱水症に適切な対処をしないと筋肉のこむらがえりや失神を起こし、最悪の場合は死に至る。発汗すると水分だけでなく、ナトリウムやカリウム、マグネシウムといった電解質も体外に排出される。排出されたものを補わなければ体が変調を来すのは当たり前だ。
 また近年、「前脱水」という状態があることが知られ始めた。脱水症のような症状はないのだが、体液量が減少して、血液の濃さを示す浸透圧が正常よりも高くなっている状態で、脱水症の一歩手前。特徴的な症状はないが、食欲が減り、頭がぼんやりし、体がだるいといった夏バテや、二日酔いのような感じがあれば、前脱水を疑った方がいいという。この段階に達したら水分補給が必要となる。ただし、水やお茶は体液を薄めてしまい、体は薄まった体液を元の濃度に戻そうとして、逆に水分を出してしまう。その結果、かえって脱水症が進行してしまう恐れがあるという。体液の喪失が軽度なら、ナトリウム(塩分)を多めに含むスポーツ飲料か、ナトリウムが少なめの経口補水液を飲むことで症状は改善される。

もともと経口補水液は、体内での効率の良い水分補給には、砂糖と塩が必要であるという発見をベースに、発展途上国での乳幼児の嘔吐や下痢に対して、効率的で簡便、安全な水分補給飲料として使われたのが最初。わが国では1960年代に、当時、東京大学医学部の高津忠夫教授を中心とする小児科電解質班が、水電解質の体での働きに関する研究成果をもとに、電解質組成とブドウ糖濃度の異なる5種類の輸液用電解質液「ソリタ」を開発、現在でも国内で広く使われている。
 現在、複数のメーカーから経口補水液が発売されているが、メーカーごとにナトリウム含有量など、成分組成が違っている。ナトリウムが少なめのものであれば、前脱水から軽度の脱水症に適し、ふだんの予防から飲むことにも向く。一方、塩分含有量の高いものは中等から重度の脱水症に適しているといった具合だ。後者はナトリウム含有量が多いため、日常的に摂取するには注意が必要だが、水分、電解質補給がすぐに必要な場合には最適だ。
 加えて高齢者は、乾きの感覚が鈍くなっているので、「喉が渇いたので水分が摂(と)りたい」と感じる前に、少しずつ飲んでおくことが脱水症を防ぐ上で重要だという。意識的に少しずつ電解質を体内に入れる。水を一気に飲むと、水中毒になってしまう可能性もあるので要注意だ。
 味の素健康ケア事業本部ニュートリションケア部の金達氏は「どういう時に、何を飲むかという知識は、まだそれほど普及していない。状況に応じて適切な飲み物を選ぶことが大切だ」と語る。
建設通信新聞(見本紙をお送りします!)

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