2014/07/19

【メンテ日本】中部地整がNETIS技術を積極採用 施工段階からの長寿命化

新設の時代からメンテナンスの時代へと転換した日本のインフラ。いまや設計から施工、維持管理、補修までにかかわる誰もが、構造物の長寿命化と無関係ではいられなくなっている。こうした時代の転換期に発注された国土交通省中部地方整備局の「平成24年度1号静清川合高架橋西地区PC上部工事」では、施工段階からの長寿命化対策が行われ、“メンテの時代”ならではの新技術が採用された。写真は大日本土木の中田氏(右)と森氏。

 このPC橋梁が設計されたのは、『道路橋示方書』が2012年に改訂され「維持管理を考慮して橋の設計を行うこと」が明示される前のこと。この改訂後、中部整備局も『橋梁の長寿命化に向けた設計の手引き(案)』を策定している。その後工事を受注した大日本土木は、これらの新たな基準類を踏まえて長寿命化対策を検討した。施工段階からできることは限られるが「緻密なコンクリートを打つなどいいものづくりに取り組むのはもちろん、コンクリート剥落防止対策として、含浸材による表面保護工法を活用した」と、同社地整静清川合西作業所監理技術者(当時)の中田光治氏。
 中田氏が同局管内の新設現場で含浸材を活用したのは今回が2件目。前回活用したケイ酸ナトリウムを使った含浸材は、塗布前に水を噴霧する作業が、含浸材を塗り重ねるたびに必要になった。今回の現場は、供用中の側道や歩道に近接しており、第三者に影響が出るため水は使えない。

同社が調べたところ、水を使わずに塗布できるケイ酸塩系含浸材が、1種類だけ存在することが分かった。国交省のNETISにも登録されたケイ酸リチウムなどを使った含浸材「コンクリートキーパー」。発注者、設計者、施工者の3者による現場推進会議に諮ったところ、採用を承諾された。同工事を含めて同時期に発注された隣接する5工区3社が一斉にこれを採用した。

散水車、ハイウォッシャー不要、熟練技術もいらないので、手の空いた作業員でも行えた
「メンテの時代」の技術者には、新設の時代にはなじみのなかった技術の採用について判断が求められる。同工事現場代理人の森久徳氏は「新技術には必ず長所があるものだが、施工性を損なわないかどうかが判断のポイント」と語る。この点、コンクリートキーパーは、塗布量が1㎡当たり40mmリットルと1回で塗布できる量で、水を使わないため散水車やハイウォッシャーも不要。「熟練技術もいらないため、手の空いた作業員も活用して塗布した」。結果として他のケイ酸塩系含浸工法に比べ「労務費が3分の1から4分の1に抑えられた」と中田氏。
 同工事では、長寿命化対策を含むNETIS登録技術約20件の採用を提案した。中田氏は「新たに出会った技術は、まず使ってみることで効果の出る使い方が分かり、次の現場に生かせる」と語る。
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