2015/01/24

【本】日本の行く末を示す 『「国土のグランドデザイン2050」が描くこの国の未来』

わが国はいま2つの大きな危機に直面している。1つは急速に進む人口減少である。特に人口減少の著しい地方部では、消滅する自治体が数多く発生するという指摘もなされており、「地方の創生」は政府を挙げての大きな課題となっている。もう1つは巨大災害の切迫であり、今後、首都直下地震や南海トラフ巨大地震などの巨大災害の可能性も指摘されている。

 こうした大きな時代の転換期にあっては、これらの課題に対応できる中長期のビジョンを描き、未来の国土づくりへの道筋を示すことが必要である。
 国土交通省は、昨年7月に2050年までの国土の長期ビジョンとなる『国土のグランドデザイン2050』をまとめた。このビジョンを基に、国土審議会において今後さらに議論が重ねられ、今夏に国土形成計画(かつての全国総合開発計画)が策定される予定となっている。
 本書は、人口減少・少子高齢化、グローバル化、巨大災害リスクなど切迫する時代の潮流や課題について、データや事例を交えて分かりやすく解説している。例えば、「2050年には、現在居住する地域の約6割の地点で人口が半分以下になる」という推計結果など今後わが国が直面すると予想される危機について、如実に表したデータも掲載されている。
 その上で、すべての人がそれぞれの地域で、安心で便利な日常生活を送れるようにするにはどうすればよいか。活力ある地域を維持するためにはどうすればよいか。
 その解決のかぎを握るキーコンセプトとして、「コンパクト+ネットワーク」を打ち出している。例えば、急激な人口減少の影響を最も大きく受ける中山間地などでは、日常生活サービスを集約するとともに周辺とディマンドバスやディマンドタクシーで結ぶことにより生活を守る「小さな拠点」の構築という考え方や事例が示されている。
 さらに国土のあり方として、日本の活力の源泉となりうる「対流促進型国土の形成」を提唱し、未来への処方せんのヒントを展開している。
 太田昭宏国土交通相と日本創成会議座長の増田寛也氏(元総務相)の対談も収録されている。わが国の将来の国土のあり方についての2人の議論も示唆に富んだものとなっている。
 わが国が将来進むべき未来へのヒントが散りばめられている。公共事業やまちづくりにかかわる方はもちろん、日本の未来を考える多くの方に読んでもらいたい1冊である。
(大成出版社・1400円+税)


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