2015/01/11

【本】防災都市づくりの重要性を説く 『東京都市計画の遺産―防災・復興・オリンピック―』

本書は東京都の職員を読者とする3万部発行の『都政新報』に連載されたもの。日本の旧植民地・占領地や東京の都市政策・都市計画に詳しい著者が、東日本大震災の発生や東京五輪の開催決定を受けて書いた、東京都市計画物語シリーズの4冊目となる。

 火災に弱い木造住宅密集地域(木密)が現在も都内に多いのは戦災復興事業が挫折したためだが、一方で民間人の熱意で街づくりを進めた地域もある。地域には街づくりに奮闘した歴史があり、先人の労苦をたどってみることで、その地域に必要な都市政策が浮かび上がる。
 具体的には新宿区の歌舞伎町、渋谷区の恵比寿、中野区の中野通り、杉並区の中杉通りなどの街づくりの歴史を取り上げた。事業史や工事史の類がほとんど存在しない都市計画・街づくりにあって、著者独自の人脈・取材力で丹念に掘り起こした。
 今後東京が、防災都市づくりの速度を緩めるようなことがあれば、震災情報が瞬時に世界を駆け巡る昨今、「東京と日本人が受ける不名誉とダメージは非常に大きくなることを覚悟しなければならない」と警鐘を鳴らす。
(筑摩書房・980円+税)

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