2013/11/23

【素材NOW】ブラジルW杯スタジアム支える日本の技術

3位決定戦が行われるエスタジオ・ナシオナル・デ・ブラジリア。
これを含め太陽工業は3会場の屋根を手掛ける
2014年6月にブラジルで開催されるワールドカップ(W杯)サッカー。12の開催都市ではスタジアムの新設や増改築を含めたインフラ整備に総額1兆4000億円が投資されたとも言われている。16年にはリオデジャネイロで夏季オリンピックの開催も控えているだけに、ブラジル市場を成長領域に位置付ける企業は多い。ブラジルW杯を支える日本の技術を追った。


◇旭硝子

 「ブラジルで当社のブランドを知ってもらうチャンス」。旭硝子の石村和彦社長はW杯をそう位置付ける。FIFA(国際サッカー連盟)とは大会のブランドライセンス契約も結んだ。独自開発した競技者用ベンチ向けのガラスルーフは全12会場に採用される。従来のルーフは樹脂製が主流であるが、あえてスマートフォンや液晶テレビなどのガラスカバーとして広く使われる化学強化用特殊ガラスを採用し、ガラスの有効性をPRする。
 10月には、サンパウロ州グアラティンゲタ市で約400億円を投じた新工場が生産を始めた。南米で最も環境負荷に配慮したガラス工場としても注目されている。建築用フロートガラスの年間生産量は22万tに達する。年間50万台分の供給を見込む自動車用ガラスも順次出荷を始める予定だ。
 4万6000人収容のスタジアム「アリーナ・ペルナンブコ」では、同社が開発した厚さ0.25mmのフッ素樹脂(ETFE)フィルム「アフレックス」が外装材として採用された。既に世界各地に採用実績があり、樹脂を溶かしてフィルム状に加工したもので、耐候性や透過性に優れ、夜間には色合いを自在にライトアップできる特徴もある。
FIFAとブランドライセンス契約を結んだ旭硝子は
競技者用ベンチ向けのガラスルーフを提供


◇太陽工業が4大会連続受注

 スタジアムのスタンド屋根では、太陽工業が02年の日韓W杯から4大会連続の受注を獲得した。現地のグループ会社は、3位決定戦や準決勝戦などが行われる「エスタジオ・ナシオナル・デ・ブラジリア」のほか、「アレーナ・フォンチ・ノヴァ」や「エスタジオ・ミネイロン」といった計3施設の屋根を手掛ける。
 中でもエスタジオ・ナシオナル・デ・ブラジリアは直径が300mを超える円形スタジアムで、デザイン的にも全体を包み込む巨大なドーナツ状の膜屋根がシンボルとなっている。膜の素材には酸化チタン光触媒を使うことで、太陽の光に反応して屋根に付着した汚れを科学的に分解する機能も付加させた。
 海外の売り上げ比率が3-4割を占める同社にとって、W杯サッカーは重点ターゲットの1つ。ブラジルには10年7月に現地法人を設立し、地道に営業活動を展開してきた。W杯スタジアムの受注はブラジル大会の3施設を含め計10施設に達する。


◇中南米開拓の成果

 マットグロッソ州クイアバのスタジアム「アレーナ・パンタナール」では、パナソニックがデジタルサイネージシステムをパッケージで受注した。一連の納入設備は大型のディスプレーに加え、監視カメラや通信システムなどとなり、年末までに納入を完了する予定だ。W杯関連では日韓共催の02年大会に続き3大会ぶりの実績となった。中南米に力を注いできた成果の1つである。これをきっかけに、ブラジルでの業績拡大を狙う。
 NECのように、サッカースタジアムを中心としたブラジルのスマートシティー開発に参加する動きもある。12年5月のポルトアレグレ市をきっかけに、計4件を受注した。最先端のICT(情報通信技術)を駆使したプロジェクトで、スタジアム内のネットワークシステムを構築する。
 日本貿易振興機構(JETRO)によると、ブラジルに進出する日本企業は350社を超える。約2億人の人口を持ち、堅調な経済発展を続けるだけに、参入企業は年々増すばかり。特に建材や素材のメーカーにとっては海外展開の重点エリアとして位置付ける傾向が強まっている。
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